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「仕事どうなの?」
風呂入って勝手に冷蔵庫からビール2本を手に取った時にオカンにそんな疑問を投げかけられた。
「まぁ、ぼちぼち。」
「本店は忙しいんでしょ?堂本さんの所の息子さんも銀行で毎日大変だって言うじゃない。」
「規模ちゃうやん。あっちは大手。」
「でも、大変だって言ってたわよ。」
恐ろしい、ご近所情報網。椅子に座って手に持っていた缶ビールを1本開け飲み始めるとオカンはあきれ顔で言うたん。
「明日、遅刻しないように起きなさい。」
「法要の時だけでええやん。」
「そうはいかないわよ。みんな揃うし、分家でも顔揃えて出ないと何言われるか。」
「掃除の分担くじ引きで決めるだけやん。」
「それだけじゃないの。」
「まぁ、そうやけど。」
缶ビールを手に持った時やった。オカンは何気なく言うた言葉なのかもしれない。だけど妙に引っかかって俺は盛大なため息をしてから立ち上がって缶ビールを持って出て行く。
「忠義。」
「寝る、おやすみ。」
階段上がって部屋に入ると缶ビールを飲みながらぼーっと考える。
----頑張らなくていいじゃない
窓を少し開けて灰皿を置き煙草を銜えてから目を細めれば瓦屋根がしっかり見えてこどもの頃見た景色と変わり映えしないって思う。
ここにおるときは……銀行員やない自分。
頑張っているつもり何てないんやけど。
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ピコン
急に聞こえた音にスマホを見てから紫煙を窓に向けて吐き出した。
どゆこと?
首をかしげてタップしていく。
【えっと、なに?荷造り終わらないって誰に言うてん?】
そう返事を送ると数秒で怪しいスタンプがバンバン飛んでくる。
【ま、間違えました。】
【やだぁぁぁぁぁ】
【泣きたい】
いやいや、なにが起きたん倉田さん?
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【どうしたん?】
ひたすらスタンプ攻撃が止まった頃にそう入れると返事を見て笑った。
【明日から大学の同級生と旅行行くんです。】
【ちょうどやり取りしていて、なにを間違えたか大倉さんの所に入れてしまいました。】
どんだけドジっ子やねん。
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作者名:瀬奈 | 作成日時:2021年1月18日 20時