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正面玄関のエレベーターは混雑するからこっちの本店と本社のほぼ人の使わないエレベーターで更衣室のある7階にいけばそこまで問題なんてないって。



メインエレベーターから少し離れたこのエレベーターを降りて男性更衣室で替えのネクタイをしてとりあえず朝帰りって言うのはばれへん感じになった。目ざとい方々に突っ込まれたら寝坊して昨日の
スーツ着ました言えばええんやし。






奥まった休憩室はほぼ人なんか来なくて缶珈琲を買って飲みながら窓の近くに行き下を見れば吸い込まれるように人が入ってくる。隣のビルも同じ感じでなんか不思議なものを見ている気がして思わず笑ってしまった時やった。









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窓ガラスに映る人が目に入り俺は頭を下げる。








同じように会釈をして自販機に行ったのを見て俺は空き缶を捨ててこの場所から出ようとした時だった。








「元気?」









急に聞こえた声に俺は「ええ。」と素直に返事をする。







「窓口大変だよね。」






「えぇ。」







「相変わらず忙しい?」








すぐに返事が出来なくて俺は「忙しいです。」そんな返事しか出来へん。








長い時間に感じる。









さっさと、失礼しますって言うてここから離れればええのに足が動かへん。









自販機から物が落ちた音が聞こえ、動かなかった足が動き廊下に出ようとした時やった。









「ネクタイ使っていてくれてありがとう。」









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------むっちゃ嬉しいです、大事にします






-----大倉くんに似合うって思ったら思った通り







-----佐野さん見る目あるんちゃいます?







-----『佐野さん』じゃないでしょ?ちゃんと名前で呼んでよ。会社じゃないんだから






-----そうやった、じゃあ呼びますね……









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エレベーターに乗り込んで苦しくて胸元を押さえた



忘れていたのに




全部忘れようって自分に言い聞かせていたのにたった一言で耐えていた気持ちが一瞬で崩れて苦しくなる




未練がましいって知られたらあかんねん




3年前に全て終わらせてんやって、なにアホに反応するん自分の心臓




ガキじゃないんやで?









チン








音を立てドアが開くとタナカさんが「おはようございます。」といつも通りの挨拶をくれた。





「おはよ。」






ここは仕事場や忘れなあかん。








自分に言い聞かせて窓口に入るドアを開けた。





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作者名:瀬奈 | 作成日時:2021年1月18日 20時

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