97 ページ47
.
「路上生活で草も食ったし、水だけで3日もざらやったし。コンビニ廃棄の飯を友達から貰って食ったりいろいろしたんやで？これ以上どん底はないでしょ？」
元から、俺が丸山さんと同じラインに立てるなんてこれっぽっちも思ってへんし、入院で特別室の10日間は今まで経験したことない快適な生活を経験させてもらってこれ以上何を求めるん？
そんなに俺は欲深くないんやけど。
金持っている人たちは大変やなぁ……なんて他人事のように感じてしまう。
「大丈夫ですって。そんなに不安なら、念書書きますよ？一筆書いて拇印押しますから。『一切関係ありません』って達筆な字で書きますから。」
早くこの苦しい状況を終わりにしたい。
こんなくだらない俺のことでセンセの手を煩わせる必要なんてないやん。
「紙用意しますね。すば るくんがレポート用紙を、確かここに。」
「書く必要はない。」
急に大きな声で言われた言葉に俺は「大丈夫ですよ。」なんて言うとセンセは大きなため息をしてから言う。
「なんで拒否しない？お前だって権利はあるんやで？」
「権利なんて求めてへんし。認めて欲しいとか思ってないし。」
「なんで？」
「求めても何もならんもん。」
きっぱり言う言葉にセンセは少し驚いた表情になり微かに唇が動く。
「何もならない？なんでそんなきっぱり言える？」
「求めて叶った経験が少ないから。やっぱり書きます。渡す渡さないは先生が決めてくれればいいですって。」
俺はそう言うてすば るくんの文具が入っている引き出しを開けた時やった。
.
白い手
力は強く俺の手首を掴む
「書かないで欲しい。」
消えそうな声で言う言葉
センセの顔を見ると不安な表情でこちらを見つめてくる。
「俺なら大丈夫ですって。」
「俺が書いて欲しくないねん。」
「先生？」
「それを書いたら……」
引き寄せられセンセの腕の中に納まる自分がいて、苦しさが一気に襲う
なに？
なにが？
何が起きてる？
苦しい
心臓の鼓動のスピードが速まり壊れるんちゃうか？そんな不安に襲われる。
「大倉と会えなくなる。」
消えそうな声で言う言葉
何が？
何が会えない？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年11月17日 16時
