冬の刻-25 ページ35
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「申し訳ないです、ここに来させるなんて……無理に来させてしまいましたね。」
「皇子にお願いをしてここから出してもらうように……」
「僕の事はもう忘れてください。」
忠義殿の言葉を遮るように僕は言う。
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「りゅうさん。」
「あなたはそんな事をしてはあかん。ましてや家庭があるなら余計に……僕に関わったらあかん。」
出会うべきではなかったんや。
一人で生きていけばよかったのに、アホな事をした。
山に来れないようにすることだって出来たのに僕は彼に関わろうとしてしまった。
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これは罰に違いない。
オニとして生きて行けと言う仏の言葉なのかもしれない。
力が抜ける。
関わらないようにしなくては……この人は僕と関わってはあかん人や。
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「りゅうさん！」
「お帰り下さい、もう……僕の事を忘れてください。」
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なんで僕は生きている？
忠義殿の僕の名前を呼ぶ声すら遠く感じる。
何度も、何度も思い出す。
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笛の音
鈴の音
皆が歓談し楽しんでいるあの景色。
遅れて入った舞の宴席で見付けたあの人。
踊っていた。
数人の白拍子の中にいた彼に心を奪われもう一度会いたいと焦がれた。
西海に逃げたあの場所で再会をすれば彼を求めるに決まっている。
だからこそ……
一緒に暮らそうなんて夢みたいなことを口にして、刀を渡した。
昔から許嫁に渡す儀式の一つを彼にしたん。
何も考えず短刀を受け取ってくれた。
そんな意味なんて知らへんから軽い気持ちやったかもしれん。
だから僕は……売ってもいいですよって言うたんよ。
もし、戦から帰って来て短刀を持っていたら、彼に話をし一緒に暮らしたかっただけ。
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ひっそり暮らせたら何もいらないそう……思うていただけ。
なのに、なんで僕だけ生きている？
死ぬことも許されないこの姿になって何が楽しい？
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何年
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何十年
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何百年
やっと巡り合えた……僕だけが覚えていて相手は覚えてへんなんて滑稽すぎやで？
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こんなの望んでへん
こんなの……
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瀬奈(プロフ) - ミムラ様コメントありがとうございます。月詠記はあのまま置くのが一番と思い置かせていただきます。こちらは新たに書き足して進めていきますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2020年6月13日 16時) (
レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミムラ(プロフ) - よかったです。世界観、書き表し方とても好きです。何度も読み返してます。消さないでほしいです。次も楽しみにしています。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 39731cc6b3 (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。前のお話をもっともっと向き合いたくて、まずは最初から書いてます。ゆっくりあのお話に繋げていきますのでお待ちくださいね。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 良かった、前のお話凄く気になっててどうなるんかなぁって心配でした。有り難うございますゆっくり待ちます。 (2020年3月9日 7時) (レス) id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年3月3日 18時
