冬の刻-17 ページ27
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見覚えのある人がそこにいて俺は足が動かなくて椿の枝を握り締め無言でその場所にいるしかできへんかった。
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「盗み聞き？」
声が聞こえたのはどれくらい時間が経過した頃か分からへん。
視線をゆっくり声の方に向け俺は椿の枝を差し出した。
「住職から託されて。」
「あぁ……すいません。」
椿の枝を手に取ったと同時に散らばっていく花びら
地面に堕ちていくそれはまるで血のようで唇が震える。
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「りゅうさんはどうしてここに？」
「住職に呼ばれて。ここは鬼門の方位にあるお寺ですから、今の不穏な空気の根源はどこにあるかと……」
「答えたんですか？」
そんな疑問にりゅうさんは笑ってから俺の手を握り歩き出す。
「少し散歩しません？」
簡単に言う言葉やけど、拒否は出来ず素直に頷き……手を引かれたまま建屋から離れた場所に向かって歩いていく。竹林の奥に何があるかなんて俺は知らんくて、歩くのが止まり、目の前に広がった光景は……無数に積まれた石が何か所かにあり、更に蝋燭の弱い明かりと線香の香り。
ここだけ時間が止まっているかのように静かで風に揺れる葉の音だけが聞こえる。
「ここは？」
りゅうさんはある場所の前で止まる。
「僕の一族の墓です。」
「墓?」
苔の生えた石だけしかないその場所が墓と言われても想像つかず俺は散らばっておかれている石を見ていくしかできへん。
「戦でほぼ海に消えてしまい骨なんてないですから、弔いかねて石で作ったんです……生き残ったおばあ様が。この小さい中心にあるのがミカド……あの時で７歳だったかな、とても利発な子でかわいい子でね。いつも僕の後をついて笑ってくれて。その隣にあるのが叔父上で、その横はいとこで……これが僕の墓。」
小さな石
しゃがみ込みりゅうさんは寂しそうな表情で見つめている。
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瀬奈(プロフ) - ミムラ様コメントありがとうございます。月詠記はあのまま置くのが一番と思い置かせていただきます。こちらは新たに書き足して進めていきますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2020年6月13日 16時) (
レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミムラ(プロフ) - よかったです。世界観、書き表し方とても好きです。何度も読み返してます。消さないでほしいです。次も楽しみにしています。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 39731cc6b3 (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。前のお話をもっともっと向き合いたくて、まずは最初から書いてます。ゆっくりあのお話に繋げていきますのでお待ちくださいね。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 良かった、前のお話凄く気になっててどうなるんかなぁって心配でした。有り難うございますゆっくり待ちます。 (2020年3月9日 7時) (レス) id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年3月3日 18時
