冬の刻-13 ページ23
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「りゅう……さ……ん」
人の気配などなかった廊下にりゅうさんの声が聞こえ俺は襖を開けると庭にある大石に座り池を眺めていた。
「いつ……」
「さっき。」
「驚いた、こんな夜更けに。」
「人に会いたくない時間言うたらこの時間しか考えられんくて。」
寝静まった時刻で虫の音が心地よい時刻に人と会うのはここ最近なかっただけに俺は直垂を少し羽織って外に出た。月明かりが微かに照らしている庭にいるりゅうさんの姿は都の人には見えへん。
小直衣(このうし)の色かてそんな薄暗い色があるん？暗い色で俺は草履をはいて近くに行く。
「りゅうさんはここまでどうやって？」
「どうやってでしょうね？」
「なんです、それ。」
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むっとした口調で言うとりゅうさんは笑ってから指で宙に文字を書いた。
「瞬間的に来ました。」
「はぁ？」
「力を使ってここまで。」
「便利やないですか？」
「そうですね。でも、力を使えば使うほど身体は弱って……」
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急に言葉が止まる。俺は眉間に皺をよせてから見るとゆっくりと口を動かす。
「人を食わなきゃあかん。」
「え……」
「書物に書かれてあったやろ？人を食らっている姿。」
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おじじ様に言われたあの恐ろしい書物を思い出し俺はゆっくりと頷く。
「最初は動物で誤魔化せるん。喉の渇きが癒せるなら何でも食うた……どうしようもなくなって人を食うたのは……戦の時やった。」
「りゅうさん……」
「僕はただ、あの人と一緒になりたいそれだけ願っていただけなのに。あの人は僕に出会うことなく生まれ変わっていく……僕はずっとこの姿のまま１人で生きていく。分かります？この無数の時間……１人で生きていく苦しみ？」
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それはいきなりの告白やった。
俺は首を左右に振りりゅうさんの肩に手を置いた。
「人の温もりも分からへん。」
「りゅうさんは誰を探しているんです？」
「ずっとずっと昔にあった人です。」
「それはりょうさんでなく？」
「ちゃいますよ……あの子は……僕が作った。この左手が消えた時に生まれた僕の……」
それ以上言葉を言う事はなくなった
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瀬奈(プロフ) - ミムラ様コメントありがとうございます。月詠記はあのまま置くのが一番と思い置かせていただきます。こちらは新たに書き足して進めていきますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2020年6月13日 16時) (
レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミムラ(プロフ) - よかったです。世界観、書き表し方とても好きです。何度も読み返してます。消さないでほしいです。次も楽しみにしています。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 39731cc6b3 (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。前のお話をもっともっと向き合いたくて、まずは最初から書いてます。ゆっくりあのお話に繋げていきますのでお待ちくださいね。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 良かった、前のお話凄く気になっててどうなるんかなぁって心配でした。有り難うございますゆっくり待ちます。 (2020年3月9日 7時) (レス) id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年3月3日 18時
