冬の刻-8 ページ18
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「この坂を下れば都に早く着く。」
りょうはそう言い緩やかな山道を指さして教えてくれた。
「ありがとう。」
「りゅうが教えてあげてって言うから教えるんやからな。いつもなら絶対教えたりしないのにさ、この近道だってほんまは内緒にしていたんやで？」
口を尖らして言うりょうを見て俺は思わず笑ってしまう。
「そうなんや。」
「ここは誰も知らへん。りゅうがたまに都に行くときに使うんよ。」
「都に？」
手綱を持ちながらりょうは小さい声で言う。
「お寺さんに呼ばれるんよ。」
「彼が鬼だと知ってですか？」
「そこは分からへん。俺もさ、りゅうと一緒にこうして生活してまだ200年やし。」
桁がおかしくないか？
なんて言いたいけど、短気な感じの人みたいやから黙っておこう。
「左手言うてたけど。」
「あ、あぁ。りゅうが戦で落とした左手が俺。」
「戦？」
「遠い昔にあった戦だって話。話してくれへんねん、その辺り。」
「いい思い出ではないから？」
「そうなんやと思うで。戦なんて最悪やもん。」
確かに良いものではない。
昨日会った人が敵……間違った世界だと俺は思うけど信五殿は違う。
力を手に入れたいがために戦は必要と言う方だから。
「戦に出たことあるん？」
「俺？りゅうが見せてくれたけど……地獄に近いな。お前は？」
「公家は戦には出ないねん。」
「あぁ、身分ある人はそうなるよな。」
その言葉は間違いではない。
身分ある上の人間は戦など参加することはほぼない。
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城に落とされたらもう生きて都には戻れへん。と、親に何度も言われていたからなんとなくこんな平和な毎日ではないと身をもって知っている。九条の親類が城に落とされ亡くなって戻ってきたのを子
供の時に見て恐怖を感じた。数日前には元気で遊んでいた俺と同い年の姫様。
むごい亡くなり方だと、泣いていたのを聞いた。
急に立ち止まるりょうを俺は見る。
「ここから先は帰れるやろ？」
「あぁ。」
「りゅうはいいやつだから。」
「わかった。」
「もう二度と会う事は無いと思うから、元気でな。」
りょうはそう言うて、手を振って元来た道を戻っていく姿を見てから俺は馬を走らせた。
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瀬奈(プロフ) - ミムラ様コメントありがとうございます。月詠記はあのまま置くのが一番と思い置かせていただきます。こちらは新たに書き足して進めていきますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2020年6月13日 16時) (
レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミムラ(プロフ) - よかったです。世界観、書き表し方とても好きです。何度も読み返してます。消さないでほしいです。次も楽しみにしています。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 39731cc6b3 (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。前のお話をもっともっと向き合いたくて、まずは最初から書いてます。ゆっくりあのお話に繋げていきますのでお待ちくださいね。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 良かった、前のお話凄く気になっててどうなるんかなぁって心配でした。有り難うございますゆっくり待ちます。 (2020年3月9日 7時) (レス) id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年3月3日 18時
