春の宵-1 ページ1
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白拍子言うたら女が多いのに珍しい事に男がしていたから僕は覚えておる。
凛とした声い合わせて踊る彼の姿はとてもきれいだった。
御所の庭で舞うあの子は綺麗で一目ぼれと言うのが正解だったかもしれへん。
会うことなんてもうない。
もう過去の話。
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武士の政権争いが激しくなり、叔父が亡くなってから僕らの一族は都を追われるようになった。
山に逃げる人が多い中でミカドと一緒に海の方に逃げたのは正解だったのか間違いだったのか分からない。戦なんて未経験な宮中暮らしになじんだダメな弟は泣いているし、おばあさまは海の神様に祈りをささげていくしか術はない。
これが僕らの末路だと思うと、最後にあの庭で見た白拍子に会いたいと思ってしまう。
高台から見える荒れた海の光景
おじいさまが言うていた。
この海は海流が激しく一度波にのまれたら助かる事はないと言う話を言うていた。
だから……おばあさまはここを選んで来たのかもしれない。
戦で負けた女の末路はどれだけ地獄かおばあさまは知っている。
そして、幼いミカドを利用されたくないって言うそんな優しさ。
烏帽子被っていても所詮は都を追われたらなんも意味はない。
村人も自分たちに飛び火しない事だけを祈っているのも知っている。それが、今のご時世だって言う事も。
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「僕は金目のものは何もないですよ。」
静まり返った木々の奥に見せたのは刀の光。
月の光で刀がそこにあると僕に教えてくれる。
「なんや、分かってたんか。」
舌打ちをして出てくるその男を僕は無言で見入ってしまう。
背の高いその男は、無造作に髪の毛を結び僕を見てにんまり笑っている。
「最近都落ちした人がこの辺りにおるって聞いて来たのになんもないんか。無意味やなぁ、ほんまに。」
髪の毛を掻きながら男は刀を鞘に入れてから僕をじっと見てくる。
「あんた、都の人にしたら貧弱に見えへんな。」
「僕は御所にいたのは数年でほぼ……東にいましたから。」
「珍しいやつ。」
「そういうあなたは……」
なんて言えばいいんだろう。綺麗だと言うのもおかしい？
「指がきれいでそう言う盗賊関係に見えないけど。」
僕の言葉に彼は笑ってから言う。
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瀬奈(プロフ) - ミムラ様コメントありがとうございます。月詠記はあのまま置くのが一番と思い置かせていただきます。こちらは新たに書き足して進めていきますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2020年6月13日 16時) (
レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミムラ(プロフ) - よかったです。世界観、書き表し方とても好きです。何度も読み返してます。消さないでほしいです。次も楽しみにしています。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 39731cc6b3 (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。前のお話をもっともっと向き合いたくて、まずは最初から書いてます。ゆっくりあのお話に繋げていきますのでお待ちくださいね。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 良かった、前のお話凄く気になっててどうなるんかなぁって心配でした。有り難うございますゆっくり待ちます。 (2020年3月9日 7時) (レス) id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年3月3日 18時
