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「記憶はないはずやって。そこはうまく……そぅ……」
あの時の医者はなんて言うてた？
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思い出そうとすれば、俺にとって消し去りたい……あの日の出来事だから言葉すらうまく浮かばない。
ほんまなら、消えないと信じていたのに消え……どんだけ待っても……会えなかったんやから。
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「思い出すことがなくても残した媒体を探さなあかんやろ？」
「あれは……見れなく……」
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俺は視線を反らすとまーちゃんは俺の左手を掴んで言う。
「自由時間は終わりに近づいてる事に気づいてください、社長。」
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急に言われた言葉は現実の言葉で俺は左右に首を振る
「俺は違う、社長やない。」
「何度でも言うで？」
「俺は……」
「素直に認めろや、7年自由にさせてる。」
「俺は……」
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「社長職、逃げれないって言うたよな。」
頬を撫でるように冷えた風が吹き抜けると、兄貴は小さい声で俺の耳元で言う。
「交換条件忘れたらあかんよ、忠義。俺は、博みたいに優しくは出来へん……利益の為なら何でもするで？」
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捕まれていた手が離されゆっくりと兄貴は言う。
「明日、仕事終わるのは何時や？」
「17時。でも、仕事の打ち合わせがあるから明日は無理や。」
「休みは？」
「明後日。」
その言葉を聞いてまーちゃんは小さく笑ってから左耳を触れて言う。
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「打ち合わせしましょうか？今後について、大事な話を。」
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残り時間はもうない。
それまでに……戻らなくていいタイムリミットはもう……
「明後日、連絡するな。」
左肩を叩かれ妙な重さだけが伝わる。
戻りたくない
あんな地獄に
自由のないあの場所なんかに
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材料注文画面を見ながら電卓と一覧表を確認していく
何回か打ち込むけど、上手く行かなくて、計算をやり直す。
「大雑把でいいと思うけど？」
「お前な。」
「いいじゃん、余ったら店長のポケットマネーで次会に繰越。」
「……結局、俺が作るんじゃねーか。」
「バレた？」
キタミツはケタケタ笑いながら髪の毛を弄っている。
「お前帰れや。」
「え？手伝ってやろうと思ってここにいるのに。」
「なにもする気ないだろ、飲み物飲んで、残ったケーキ食ってるだけやんケ。」
「バレた？」
なんやねん、コイツ。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年12月3日 18時
