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「疲れで見間違えたんちゃうか?」
「そこまでぼけてないし!あ、注文は麺大盛り、野菜マシマシの背油多めでニンニクなしで。」
「……食うな、ほんまに。」
「腹減ったん。」
ラーメン屋に呼び出した信ちゃんに俺はさっき見た人の話をした。
「彼だった。」
俺は断言すると信ちゃんはグラスに入ったビールを飲んで言う。
「でも、相手はタツを見ても何もだったんだろ?」
素直に頷くと信ちゃんは餃子を食べながら言う。
「ほんまにその相手さんならタツを見て反応しないのはおかしくないか?」
返事が返せない。
彼なら……俺を見て反応してくれるはずやし、何も反応なかったし。
「そもそも、相手さん急にいなくなったんやろ?」
「そう……」
「住んでいたマンションも引き払っていたら、完全にタツとはお別れしたって事ちゃうか?」
「信ちゃん!」
「相手さんがどう考えた行動か分からへんけど、タツとは終わり!って事ちゃうか?」
「お待たせしました。麺大盛り、野菜マシマシ背油多めのニンニクなしです。」
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空気読まずに置かれたラーメンが俺の前に鎮座した。
「先に食う。」
「どうぞ。」
一気に麺と格闘を始めた。
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「忘れろ、そんな奴。」
「……信ちゃん。」
ラーメン屋を出たのはそう時間経過してない。ことある事に呼び出す信ちゃんは、飲み屋で意気投合してからの関係。
煙草を吸って俺を見てくる目は……まぁ、そう言う関係だってことを告げているようなもんよな。
「別れるなら別れる言葉を聞きたいねん。」
「おらん奴の言葉はないやろ。」
「そうやけど……」
「もう、俺でええやんけ。」
きっぱり言う信ちゃんの言葉に俺は素直に頷けない。
こういう時に優柔不断な気持ちがむっちゃ出てしまう。
気まずい空気が漂う中で、ご機嫌な軍団が通過していく。
なんとなく、会話ができないこじれたカップル……男同士やけど、それもこの世の中当たり前やん。
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作者名:瀬奈 | 作成日時:2019年12月3日 18時