37 ページ37
.
小さいプラスチックケースを振るとからからと音がする。
大事な何かが入っているのは分かっている。
開ける勇気がないのは中にあるモノが使えないと言う現実を認めたくないからなのかもしれない。
あの声が聞こえる
僕が何度も知りたい声の主が……あの人だって理解できたのは『さよなら』を言われた瞬間に分かった。
.
泣きそうな目で告げた声が何度もループして忘れていたあの声の主が彼だって……
鍵の開く音が聞こえ、僕はそのケースをいつもの定位置に置いて玄関に行くと見慣れた顔が驚いた顔でいた。
「合鍵役に立ったな。」
「僕いましたよ。」
「連絡したけど出ないから合鍵使ったんやって。」
「あ……音消してました。」
思わずそう言うと呆れた顔で僕を見て言う。
「せめてバイブにしておこうや。」
「んー、なんか休みの日は消していた気がして。」
「なら確認してや。」
口を尖らして言われ僕は「ごめんて。」と言うしかできへん。コンビニ袋を渡されて僕はのぞき込むと小さく笑って言われた。
「まだご飯食べてないでしょ？」
「ん。」
いつものようにテーブルに弁当を置いてから棚にあるカップを手に取って章ちゃんは自分と置きっ放しの僕のカップを取って飲み物の準備をしていく。
.
同期入社
研修からの付き合いで、研修中に記憶障害が始まった時にも仲間は受け入れてくれた。だからか分からへんけど、同期との関係はほんまに濃いと思う。
「そう言えばさ、希和と付き合ってん？」
急に言われた言葉に僕は「はい？」なんて声を上げると章ちゃんは笑って続けた。
「なんか仲良いじゃん。」
「仲良いって言うか……ご飯は一緒に食べに行きますよ。」
「それ以上は？」
「それ以上？は？？章ちゃん、何を考えているんですか。」
顔を真っ赤にして言うと章ちゃんは大笑いするし。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年12月3日 18時
