35 ページ35
.
季節が進むのがほんま早いって感じるのは季節もののケーキの話を世間より早くしているせいだと思う。
こないだクリスマス話をしたと思ったのに、すでにその話をチーフとしているんだから。
それくらい俺は……外の声をシャットアウトして生きていたのかもしれない。
もっと努力しなければ
もっと向き合わなければ
もっと
もっと……
無駄な言葉を無駄に繰り返し呟くのは
あっちに戻されてしまう
.
背後に迫てくる『何か』から逃げるのに必死になっていく。
.
「大倉のケーキどれ？」
キタミツはサンプル広告を持って俺の目の前に突き出す。
煙草を銜えてるの見えてる？？
燃えるってマジに思いながら少し避けてから小さい部分にある写真を指さした。
「あ、やっぱりチョコケーキなんだ。」
「やっぱりって何？」
「大倉って言ったらチョコってイメージだからうちの店では。」
「チーフにも言われた。」
「でも、チョコケーキでも作品は同じ。味が違うだけでしょ？」
その言葉は正解と言えば正解で、ケーキと言う分類は同じで違うのは味。
雑な言い方だけど、俺としてはきちんとすみわけしてもらいたい部分もある。
俺が勝負できるのはどうしてもチョコレートの味がメインになっていくのがいやで1年悶々としていたなんてさすがに言えない。
チャレンジしても結局はチョコレートの世界に戻ってくるんだから。
小さいサイズで3日間各30台つくれるありがたさ。
ただ、自分のだけでなく役割で任された分も作らなきゃあかんから実質ハードになるのは目に見えている。
やっと作品が作れる嬉しさがある。
その前に予約すら入らなかったら終わりやけど。
振動が来てポケットから出すのはスマホ。
俺は画面を確認してからすぐに返信をする。
「大倉さ。」
「ん？」
「こないだ見かけたんよ。」
「どこで？」
「ホテル街。」
指が止まりゆっくり視線だけキタミツに向けると俺を見る目は……
「なにしてたん？」
酷く冷ややかでいつもの笑顔がない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年12月3日 18時
