29 ページ29
.
「営業推進室主任、横山です。」
ゆうちんのあいさつの後に櫻井部長から総務部長が参加できず僕が来た事を告げてから「総務課主任丸山です。」と頭を下げると彼の視線は一度向けられすぐに紙に落とされた。
出席者を見ると5名分の名前しかなくて、彼は何者なのか分からない。
先方さんの部長さんが社長を紹介し、専務を紹介し……最後に目配せをすると社長は急に櫻井部長に言いだした。
「今日はうちの三男を参加させてます。社員ではないんですけど、よろしいですか？」
いや、そう言われたら『困る』なんて言えへんやん。
櫻井部長は「大丈夫です。」なんて返事しているけど心の中は困った状態よね？
ゆうちんが小さい声で「まじか」なんて言ってるんやから。
里田さんと目線だけ合わせて相手さんの言うとおりに進めていくしかないと思い僕らは黙るしかできなかった。
資料を手に持って話がスタートする。
お互いそれぞれの話を交互にして、歓談しながらほんまにゆっくりした話し合いで茶話会に近い気がする。
どうしても目線の先にいる彼を見てしまうけど、紙から一向に視線をずらすことしないし、隣にいる専務をつっついてシャーペンを貰い何かを書いて行く。
社員でもないんよね？
時折小さく笑って専務に見せたら驚いた表情して自分らの部長側見てるし何をしてん？
不思議な人や。
約1時間のお互いの話は腹の探り合いって感じで終わった気がする。
社長から「会社に持ち帰り話をします。」と言われた時のゆうちんの表情は真剣な眼差しやった。営業さんにとってここからが勝負だって感じる。
「食事を用意してますので、フランクに話をしませんか？」
そう話を切り出したのは専務からでありがたく僕らは快諾すると食事の準備が始まる。
「失礼、一服。」
そう彼が口にすると、専務も一緒に外に出ていく。
「仲良いよな。」
ゆうちんの言葉に僕は素直に頷いてから冷めた珈琲を飲んでいた。
しばらくして、僕はトイレと一服と声をかけて席を外した。目の前の空席は相変わらずで、気にして
しまうのも良くないと思いトイレの案内表示に従って歩いている時だった。
聞こえた声は専務の声と……彼の声は笑いながら話していてほんまに仲が良いと感じる。トイレから出て喫煙スペースに入っても彼はまだいてスマホを操作している。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年12月3日 18時
