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聞こえるのは穏やかな口調で僕の名前を呼ぶ。
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『隆平。』
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その声に僕は恥ずかしくなり照れてしまう。
顔は見えなくて、某アニメの犯人の黒い人？某アニメに出てくる黒い影？姿かたちはなんとなく。
僕より少し背は高い気はする。
笑った声はほんまに楽しいんやなって感じて……手を伸ばして瞬間
毎回……目を覚ます。
宙をさまよっている手の時もあれば、何もない壁を掴もうとしていたり、布を掴んでいたり
あの人は誰なんだろう？
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ケースに入れたままのSDカード。
入院中に仲良くなった看護師の人から渡され保管したまま忘れていたのを再生してみようと思ったらカードが破損していて壊れて何が録音？録画？されているのか分からなくて持ったまま3年過ごしている。
煙草の煙が漂っていく中で、目の前に差し出されたのは缶コーヒーで僕は目線を向けた。
「ゆうちん。」
「会社では横山さんやろ？」
「ごめん。」
僕は灰皿に灰を落としてから缶コーヒーを受け取った。
「どうしたん、眉間に皺寄せて。」
「んーーー色々考えてて。」
僕がどうして考えているのか？ゆうちんは知っている。
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数年前にある事情で僕は記憶が欠落している。
理由は事故に遭ってから何やけど、頭を強打した時から約4年の記憶が欠如していて、オカンに相当迷惑かけた。強打した時に出来たとある病気の為に手術を早急にすることになって、僕は素直に手術を受けた。
それによって、失くした記憶を思い出した時に約4年分の記憶が曖昧になって薄っすら覚えているという最悪な症状。人の記憶力は千差万別だと言うけど、医者もこのまだらな記憶は結構大変な事で実例が少ないから何とも言えないとか言われてお手上げあった。
なんでか、この会社に勤務して働いていた事。
1人暮らしをしていた事。
それは覚えていたけど……
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年12月3日 18時
