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「いきなりすいません、大倉さんですよね？」
頭を下げて言われ俺は頷くしかできへんかった。
「CALVAで見かけた時に……ずっと気になっていまして。ネームプレートでお名前を覚えました。」
返事ができず黙っているとさっきまで彼と一緒だった人が遠くから声をかけている。彼は「もう終わりますから。」なんて相手に向かって言い改めて俺を見て言う。
「僕、丸山と言います。」
「……丸山さん。」
慌てて差し出した名刺はこないだ生田くんがくれた名刺と同じもので俺は黙って見つめてしまう。
「急に声かけてきて名刺渡されて怪しいと思いでしょうが、別に変な意味でじゃなくて、その……お店で見かけた時にとても気になりまして、話がしたくて。」
「話しですか？」
「別に銀行にいるから金融商品勧めるとかじゃありませんから安心して下さい。僕はその手を勧める事はできませんので。」
焦った顔で言われ俺は「はぁ。」としか返事ができないと眼鏡のブリッジを上げて彼は頭を下げて言う。
「いきなりでほんますいません。大倉さんの事が気になってしまい。」
同姓同名のそっくりな人中なわけないやん……
そんなワケないやん……
隆平と同じように口元にあるホクロまで同じようにあるもん？
「店にいるんで……何かあったら俺を呼び出してくれれば大丈夫にしておきます。」
「ほんまですか？」
「えぇ、そうすればいいですかね？」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げられ俺はどうすればいいか分からなくなっていく。
少し顔を赤くして言う彼の姿を見て、俺は名刺をポケットに入れて「失礼します。」と声をかけ階
段を下りていた。
いつ自分の部屋に戻ったか覚えてなくて、玄関に座り込んで名刺を見ていた。
「総務 主任……まるや……ま……」
この役職になるって結構勤務してないと出来ないと思うんやけど
やっぱり別人？
そっくりさんどころじゃない。
声も表情も隆平には違いないのに……
「大倉さんか……」
完全に俺のことなど知らないと言っているような口調だった。
これって、声も表情も何もかも兼ね備えたパーフェクトそっくりさんなのかもしれない。
ポケットに入った煙草を銜えてから靴を脱ぎ捨て部屋に入り名刺をテーブルに置いた。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年12月3日 18時
