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2件の訪問を終えてやっと会社に戻っている道で急に村上くんが言い出したん。
「大倉は平社員でいたいん？」
スマホを操作しながら言う言葉に俺は眼鏡を指で上げてから答えた。
「そんなアホ何処にいます？」
「そうよな。」
にんまり笑って悪い顔して言うてるよこの人。
「村上くんこそどうなんです？」
「俺か？上に行ったらもっとあほみたいに頭下げなきゃあかんのが嫌やねん。上司の顔色を伺って部下には文句言うたらパワハラやん。」
「そうやね。」
「どこら辺が一番楽なんやって模索中。」
「そんな模索するもん？」
「そうやで？いかに楽するかって言うのがな。」
笑って言うけど、相当……ずる賢くなきゃ無理ちゃうん？
「大倉、中途で来たって事はな……お前はキャリアになるん。」
突然言われた言葉に俺は信号待ちで村上くんを見て言う。
「は？何言うてん？大学も出てない俺が？ノンキャリやって、俺の場合。」
村上くんは煙草を灰皿に入れてから笑って言う。
「あほやな。この世界のキャリアは経験値や。」
「経験値？」
「吸収された会社でお前がまともに動くって言う事で排出されているんや。学歴も関係あるかもしれんけどな、この会社は即戦力だけ求めてんねん。」
急にそんな事を言われても自分がキャリアだとか言われてもピンとこないもんや。
会社の駐車場に着きエンジンを止める。村上くんはスーツの胸ポケットから封筒を取り出して俺に渡してきた。
「なんです？」
「辞令や。」
「は？辞令……」
俺は封筒を開け、中にある文章を読んでいく。
理解できなかった。
「この時期に？」
「時期なんて関係ないねん。ちょうど上の1人がポカしてこっち落下傘してくるん。大倉がそのポジションに行くって事や。」
「冗談でしょ？村上くんちゃうの……行くのは？」
「いいや、冗談でなくほんまの事や。」
「村上くんの下でいたいし……いきなり無理や、俺には。」
「大丈夫やって。お前が昇格してくれへんと俺も異動出来へんねん。」
大笑いして言われても出来ないとしか言いようがない。
なんで……俺が……異動？
この部署に来て2年目過ぎたばっかりやって言うのに……
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年5月22日 17時
