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「彩音は……もうおらん。名前は残るけど、俺はもうこの体のまんまでいいと思っている。オヤジにも検査ついて行ってもらったけど、子供の作れない身体ではなかったし。」
二人が黙ってしまうのはよくある事で俺は湯飲みを手に持ってオカンを見て言う。
「こないだ言われたんよ。俺の症例は子供の作れない人も多いのに……よくこっちが機能が残ってよかったって。まぁ、最初は仕方ないやん。」
「変な言い方やけど、使いもんにならんかと思ったけどできたし、章ちゃんのデカサまではいかへんけど……女の人ときちんとシてるからそこは安心して。もちろんオヤジに言われた通りゴムは使用しとる。」
オヤジが顔を真っ赤にして「お前な……」呆れた表情になったんやけど気にせず。オカンに突然のカミングアウトでかなり驚いた顔をしていたけど、仕方ないか。
「たまに気持ちが変になる時はあるよ。でも、中学の時ほど酷くはない。」
俺は少しだけ息を吐き出してからオヤジを見てオカンを見て
「彩音はいい思い出で、俺は忠義で生きているんやから。そんなに心配しないでええって。」
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なんて親に言うたけど……実際は気がおかしくなるそうなくらい自分でも怖くなる。
あの時まで俺は彩音で、急に切り離されて忠義になったんやしそれを理解して生きて行けって言われても未だに受け入れる事が出来へん。
酒で逃げようとしているのも、女に逃げようとしているのも自分が自分じゃない不安になる。
検索すればそんな症例はあってデリケートな問題過ぎて軽く口にもできへん。
ただ……言える事は、俺はある時期まで女であった
それが彩音……オヤジとオカンが考え抜いて名付けてくれた名前で章ちゃんの妹だった
七五三の写真も小学校の入学式も俺は彩音で
ある時期を境に忠義として生きている
もちろん、この選択は家族で話して自分の身体の現状をすべて受け入れて……
なんて言い方をすれば正当性なんやけど実際は女の機能と男の機能を持っていると共存は出来へんから切り離さなければならん。
俺の場合は女の機能してないとわかって早めにしたんやけど……身体は理解しても頭が理解しない。
男として生きているのに、頭の中で彩音の存在が大きくなって俺を潰しに来る
笑っているのは俺やけど、泣いているのは彩音……
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俺は……誰なんやって……
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2019年5月22日 17時
