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キセキ216 ページ11

山崎「A」


優しく名前を呼ばれ
生返事をした彼の頭に、山崎の手が触れた

そのままわしゃわしゃとシャンプーを泡立てられ
白凪は予想外のことに瞳を瞬いた


A「え、っと…?」


山崎「おら、泡流すから目瞑っとけ」


小さな子供ではないけれど
優しく触れる手が心地よくて、白凪も泡を流し切られるのを大人しく待った

暖かいお湯に身を委ね
促されるまま湯船に浸かれば、白凪の中に渦巻いていた黒い感情も薄らいでいった


ほっと息をついた白凪は
膝を抱えてそっと左足首を撫でる


A「(ほんと、弱くなった…)」


特に精神的に
元々精神的にも強いタイプではなかった
けれど吐き出せないから
溜め込んで
溜め込んで
溜め込むことしか出来なかった

吐き出してしまえれば
楽になるのはわかっていたけれど
弱さになると思っていたから、白凪はあえて吐き出さなかったというのに


A「(全部、先輩たちのせいだ)」


いや、おかげと言うべきか
彼らは白凪に弱さを与えた
強さを与えた

強くあるべき理由をくれ
弱さを吐き出すこと教え
そして支えて
寄り添って
手を取って立ち上がらせてくれる


A「(楽しかったなぁ)」


この1年
心の底から楽しめたとは言えない
たくさんの弊害はあったけれど、バスケをすることに対しては楽しかった

1度目は辞めて
2度目は逃げた

そんなバスケを好きだったから
楽しめる環境であることが幸せだった


だから、欲が出ているだけだ


山崎「A、寝てないよな?
お前長風呂できねぇんだから、逆上せる前に上がるぞ」


A「ん」


当たり前のように白凪に手を差し伸べてくれる

手を取り湯船から上がった白凪の右足には数針程度の
縫い跡が残っている


ミニバス時代の出来事の1つ
これも不運な事故だった、と彼は言った

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作者名:琉月 | 作成日時:2018年8月24日 12時

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