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＿＿＿＿僅かに冬の寒さの残る、ある穏やかな初春の事だった。
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見たことの無い青年が、見たことの無い服を着て、見たことの無い武器を腰に携えている。
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男にしては少し長い、雪のような白い髪に、氷のような薄い蒼の瞳。
いつも微かに笑みを浮かべた、掴みどころのない人だった。
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濃紺の軍服に身を包んだ彼は、地面に僅かに残った雪にブーツで足跡をつけながら此方へやってきた。
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｢…驚いたな、全然気づかなかったよ。｣
そう言って頭を撫でる、暖かい手。
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｢…お兄さんは、強いのですか｣
｢どうだろう…少なくとも"これ"の扱いは、この国の誰よりも心得ているかな｣
そう言って腰に刺した武器の柄の部分に手を添える
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｢…教えてください｣
｢…｣
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｢君は、なんのために"これ"を使うの？｣
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その問いに対する答えは一つ
｢＿＿を、…守るために｣
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そういった時男はどんな顔をしていただろうか。よく覚えてはいない。
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｢そうか、…君にも、守らなければならないものがあるんだね。｣
｢…｣
それから何度も彼はここを訪れた。
あの人も、特段咎めることなくそれを黙認していた。
ある日彼は私を連れて、郊外のある田舎町へと足を運んだ。
｢これは…｣
｢…僕の祖国の花だよ｣
薄紅色の花弁が風に舞っている。2人の足元には、地に落ちた花弁が所狭しと並び、地面が斑模様になっていた。
彼の髪と、裾の長い軍服の外套が風にゆれる。
すぐに何処かへ消えてしまいそうなその儚い男に、思わず声をかけた。
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｢…＿＿さんは、どうして強くなったのですか｣
｢…うん、そうだね｣
いつもはスっと細められている彼の蒼い瞳が、舞い上がる花の花弁をいっぱいに写す。
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｢＿＿愛する人を、守るために｣
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そうだ、忘れもしない。
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｢…君と、同じだよ｣
そう言って僅かに顔を綻ばせた、その男の名前は＿＿
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蒼(プロフ) - セレナさん» ありがとうございます。楽しみにしてくださっている方々のコメントがすごく励みになります。これからもお楽しみに！ (2021年7月7日 19時) (
レス) id: 91491d588c (このIDを非表示/違反報告)
セレナ - とっても面白いです！次回が楽しみです！ (2021年7月6日 23時) (レス) id: edca8fa170 (このIDを非表示/違反報告)
桜澤(プロフ) - 蒼さん» 今後も楽しみにしてます！ (2021年7月4日 0時) (レス) id: 20b9b01cf5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - Ｒ!Ｎさん» ありがとうございます。これからも楽しんでいただけるようなお話を書けるように頑張ります！ (2021年7月3日 23時) (レス) id: 91491d588c (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ!Ｎ(プロフ) - 出てくるキャラクターやお話の全てが面白く、一気読みしました！！続きが楽しみです！応援してます！！ (2021年7月3日 21時) (レス) id: 5067a2983b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 | 作成日時：2021年5月8日 15時
