31頁 ページ31
彼女の言葉にリアンは瞳を見開く
｢それでこの船に？…彼の職業を考えても、明らかに危険だろ…｣
｢ですが、なんの手がかりも無かった私には、彼に近づく唯一の手紙だったんです。｣
膝の上に上品に揃えられた震える両手を握り、彼女は悲痛な声でそう言った。
｢なら、俺たちを襲ったのは…｣
｢…貴方を巻き込んでしまって、本当に後悔しています。｣
｢いや、これは俺の自業自得というか…｣
＿＿
｢ごめんなさ、い…｣
か細い声でそう呟くと、突然彼女の体がぐらりと傾く。
咄嗟に抱きとめるリアン
｢音さん…！起きて！寝たらだめだ！！…｣
氷のように冷たい彼女の体。極限まで冷えた自分の体の限界を感じながらも、何とか声を絞り出して叫ぶ。
誰か、誰か来てくれ…
＿＿＿＿
＿
｢……あ、、、｣
目にじわりと涙が滲む寸前、突如目の前の扉が開かれ、外の暖かい…そう感じる空気が部屋に吹き込んできた。
｢大丈夫ですか｣
そう自分に問いかける、見覚えのある人物の顔を見て、緊張の途切れたリアンはそこに居るはずのない友人の名を呼ぶ。
｢クレース…？｣
黒い髪に蒼い瞳。自分の知っている彼女とは似ても似つかないはずの容姿の青年…
だがそれでも、極限状態にあった彼の意識が切れるには十分なきっかけだった。
＿＿＿
｢はは…こんなことってあるんだな…｣
＿＿
そう呟くと、彼は再び意識を手放した。
｢…｣
数人の走る足音が聞こえた。青年は見覚えの無い東洋人らしき女性へと目を向ける。
室内の光に反射した青年の蒼い瞳が、僅かに朝焼けの影を帯びたような色に揺らめいていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 269人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼(プロフ) - セレナさん» ありがとうございます。楽しみにしてくださっている方々のコメントがすごく励みになります。これからもお楽しみに！ (2021年7月7日 19時) (
レス) id: 91491d588c (このIDを非表示/違反報告)
セレナ - とっても面白いです！次回が楽しみです！ (2021年7月6日 23時) (レス) id: edca8fa170 (このIDを非表示/違反報告)
桜澤(プロフ) - 蒼さん» 今後も楽しみにしてます！ (2021年7月4日 0時) (レス) id: 20b9b01cf5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - Ｒ!Ｎさん» ありがとうございます。これからも楽しんでいただけるようなお話を書けるように頑張ります！ (2021年7月3日 23時) (レス) id: 91491d588c (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ!Ｎ(プロフ) - 出てくるキャラクターやお話の全てが面白く、一気読みしました！！続きが楽しみです！応援してます！！ (2021年7月3日 21時) (レス) id: 5067a2983b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼 | 作成日時：2021年5月8日 15時
