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「……煙草って美味しいんですか」
ふとそんなことを聞いてしまう。
こんな子供みたいなことを聞きたい訳では無かったのに。
でも出てしまった言葉は片付けられないから、静かに返事を待つ。
「うーん、美味しくはないな」
思っていた返事と違って、
そうなんですか? とか間抜けな返答をしてしまう。
「吸いたくて吸ってる訳やないから」
何だかよく掴めなくてもやもやする。
大人とはそういうものなのだろうか。
首を捻って考え込んでいたら「吸ってみる?」と笑いながら言われた。
「壁越しやのにどうやって吸うんですか」
「そうやなぁ」
「俺、まだ十九ですよ」
「知っとる」
「……俺、幼いですか」
突拍子もないことを言ったら、ぽんぽん返されていた言葉が少し詰まった。
「……まだ子供やな、可愛い子供」
言葉に現実を突きつけられたように胸が痛んで、
「そうですよね」と弱々しく返す。
俯いて落ち込んでいるのが女々しく思えて悔しい。
勝手に落ち込んだ所で何も変わらないのに。
「濱田さんは大人ですよね、綺麗な女の人が似合いますよ」
自分で首を絞めなくていいのに、皮肉がぽろりと口から零れ落ちる。
自分で言ってて少し泣きそうだ。
「俺は綺麗な女の人とか要らんし、可愛い子供みたいな子の方が好きやで」
まあ、恋人も居らんしなぁ。
なんて自嘲気味に笑う声も聞こえた。
これは、少しぐらい期待してもいいのだろうか。
思い切って聞いてみようかと口を開いたら、カタンと物音がした。
「ごめんけど、明日も早いねん。また」
「……おやすみなさい」
「おやすみ」
その後、カラカラと窓が開いてピシャンと閉まる音がした。
さっきまで見えていた白い煙は無くなって、香りだけが残る。
煙草の香りを胸いっぱいに吸い込めば段々空しくなって
また俯いた。
希望があるのか、無いのか、
自分に問いかけても答えは出ないから。
途方に暮れて、ただ月を見ていた。
Fin .
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零(プロフ) - 蘭芽さん» 返信遅くなりましたが、コメントありがとうございます。分かりやすくガツガツ行くようなイメージではなかったのでこのような作品になりました。そう言ってもらえて嬉しいです。 (2018年12月30日 16時) (レス) id: ea67087d27 (このIDを非表示/違反報告)
蘭芽(プロフ) - ありがとうございました。両片思いなのが良いですね。イチャイチャラブラブすんじゃなくて落ち着いた恋ってばどさんにピッタリだと思います。 (2018年12月8日 16時) (レス) id: 568cceb099 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - はるさん» リクエストありがとうございます。人気CPですねー、考えてみます。 (2018年10月21日 22時) (レス) id: 2f1a09272c (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - リクエスト失礼します。青×緑でリアル設定のお話が見たいです。よろしくお願いします。 (2018年10月21日 21時) (レス) id: d6652bb1f2 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - いちご18さん» リクエストありがとうございます。考えてみますね。 (2018年10月20日 19時) (レス) id: 2f1a09272c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零 | 作成日時:2018年9月30日 17時