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彼女が決めた理由。
*
何でこんな状態になったんだろう。
「…やば」
この空気の中で動けって言われても動ける気がしない。
…きっと、殺人犯に遭遇した時ってこんな風に冷や汗かいてるんだろうな。
「なあ」
「聞いても良いか?」
私の目の前に鎮座していたヴォルフモンがようやく口を開いた。
「私が答えられる範囲で」
せめてヘリウモンがいたらましだったかもしれない。…伝説の十闘士と真っ正面から話し合うとかどんないじめですか。
「君は何故、あの時死のうと思ったんだ?」
「何故って言われても…」
「探せば他に方法はあっただろう?」
さらりと彼の綺麗な薄い金色の髪が揺れた。
…探せば、か。まあ、あったかもしれないけど。
「…一人が消えるか、複数人が消えるか。どっちが良いか天秤にかけただけだよ」
「メティスは保持者が死ねば完全に消滅して、もう誰からも奪われない」
「…多分、きっと…」
私が死んだのは私の自己満足なんだと思う。
その言葉は言いかけたけどやっぱり言うのはやめた。
「いっぱいの命が消えるより、一人の命が消える方が良いでしょ?」
そう笑えば、ヴォルフモンは不満そうな顔を一瞬だけ見せた。
…そこら辺は輝二と似てるよね。
「そうか。突然押し掛けてすまなかった」
「平気だよ」
まさかの飛び降りる気なの?まあ、一階だから怪我もないんだけどさ。
「君は、君自身が傷つく事で誰かが悲しむ事を知らないんだろうな」
(命の重さ)
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作者名：怜夜 | 作成日時：2015年11月26日 23時
