近所の野良猫※※ ページ1
「文化祭お疲れ様〜〜ッ！！」
自身のハツラツとした声が教室を支配した。まわりの友達が「うぃ〜〜〜」と野太い声を上げる。
2日間に渡る文化祭が終わり、クラスはセンチメンタルな空気に包まれた。これが、最後の文化祭だったからだ。
どうも自分はこの雰囲気は好きでない。感傷的な雰囲気を打ち破るべく俺はクラスに呼びかけた。
「打ち上げ行こ！！」
もちろんクラス全員で、そう付け加える。
みんながいいね、どこ行く？ といった話し合いをしている中、たったひとり声を発した。
「俺、行かない。用事、用事」
黒名蘭世である。彼は真っ赤な髪の毛を三つ編みにした可愛らしいスタイルの男子だ。つぶらな目と鋭い歯、そして基本ひとりでいる様子はまるで近所に住みついているツレない野良猫のようである。
「おう、……わかった」
狼狽えつつもそう言えば、スクバを肩にかけ直してスタスタと歩いていった。
ほんとうにツレない猫である。
少し白けた空気を再び盛り上げながらも俺はやはり、ずっと黒名のことを考えていた。
「ん、ふっう、っあ、……」
男子トイレに響くのは自身の嬌声とちゅくちゅくといった水音。便器に座って必死にそれで遊ぶ。
「くろ、なっ……」
時折、黒名の名前を呼ぶ。
俺はゲイだ。そして黒名が好きだ。ツレない態度がどこかクるのだ。
みんなが打ち上げについての話し合いをしている間、黒名と話せたことがとてつもなく嬉しくてついトイレに駆け込んでしまった。
それでこの有り様である。惨めだ。惨めにもほどがある。
「っああ、イッく、くろなぁっ、！」
果てる寸前、顔に風を受けた。
個室の扉が開いたのだ。いや、正確には開けられた。
「っんん、」
そして果てた。
視界に広がる霞が消えるとそこには赤い三つ編み。
「っえ、黒名……？」
動揺と股間を隠さぬままその人物の名前を口にする。
目の前の人物ははあぁぁ〜〜ッと深いため息をついた後、ぼそりと零した。
「えろい、えろい」
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作者名：ちばさんだよ | 作成日時：2024年3月14日 21時
