2．疑惑 ページ3
「お兄さんお兄さん！ ジャーマンポテト食いたい！」
俺はこのイケメンお兄さんと仲良くなろうと思う。誘拐されたけどもお兄さんに敵意や殺意は見られなかったためだ。お兄さんの家に泊まれるからホテル代が浮いて助かったし。
まず手始めに料理をねだったが、
「そうか」
とだけお兄さんは言って、ストレッチを続行する。
「ツレない人……」
「クソ黙れ」
真顔である。笑うでも怒るでも呆れるでもなく、ただ無である。こいつは表情筋が機能していないのかもしれない。心配になってきたが、先程車の中で笑っていたんだった。いけないいけない。
「お兄さーん遊びたいよ〜……それ何のポーズ？」
「花輪」
お兄さんがこちらに目を向けることは無く、何かしらのストレッチからヨガを始めた。まじでツレねぇなこのイケメン。
「お兄さん俺なんかスポーツしたい！」
お兄さんをじぃと見つめてそう言うと、ややあってお兄さんは立ち上がった。
「サッカーする。ついてこい」
ようやっとお兄さんはこちらを見てくれた。その嬉しさから頬が綻ぶ。玄関から「クソ遅せぇ」と急かされてお兄さんに駆け寄る。
車に揺られて少しすると、青々とした芝生のグラウンドのような場所についた。
「オレの後ろにいろ」とお兄さんは言って歩き始める。トタタとお兄さんの背中に走り寄る。すると、何やら声がした。
「うわカイザー来た」
「黙れクソ世一」
……なんかすごく濃いような気がする、いろいろ。
「潰しに来てやったぞ世一ぃ」
「言ってろ」
日本人だろうか、イヤホン越しではない透き通った日本語が鼓膜を叩く。
「お兄さん、あの人日本人？」
「出てくんじゃねぇ」
ばちり。頭に双葉を生やした多分日本の人と目が合った。
「ウワ！！ カイザー誘拐したのかテメェ！！」
あ、はい普通に誘拐されました。そう言ってやりたいが、いろいろ危ない気がして必死で飲み込んだ。
「友達の弟だ世一安心しろ」
うそつきだ。このお兄さんうそつきだ。友達とか片手で数えれるくらいしかいなさそうな顔してんのに無理あるだろって。
そんな失礼な考えが伝わったのだろうか、頭をギリギリと掴まれる。その大きな手から逃れるべく世一？ さんのもとへと駆けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちばさんだよ | 作成日時：2023年9月2日 20時
