白い尾っぽの短編集 (ページ10)

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◇我儘お嬢様---sm ページ10

《お嬢様×執事彼氏パロ》《とある曲をインスパイアした物です》

今、私は薄暗い部屋の真ん中に置かれた椅子に縛り付けられている。
目の前にはナイフを手にした男の人。誰が見てもわかる。誘拐されたのだ。

でも私は怖がりなんてしない。あくまでも冷静に椅子に縛られていた。

「チッ…いつになったらくんだよ…」
『そんなに焦らなくても、必ず来ますよ。少し深呼吸をしてみたらいかがです？』

「あぁもう！なんなんだよお前は？！なんで怖がらないんだよ！！可愛げねぇなぁ！！」

『……確かに。怖がっていたほうが王子様も助けてくれるのかしら…？』

そんな戯言を考えながらぼうっとしていると、薄暗い部屋にガシャンッという音と共に光が差し込む。
思わず目を瞑っていると、男の人の苦しそうな声と誰かが入ってきた音がした。

『…随分と待たせるわね。スマイル？』

「申し訳ありません。遅くなりました。」

光に慣れてきて目を開けると、すぐそばに私の専属の執事兼恋人のスマイルが
私に結ばれた紐を淡々と解いていた。

……相変わらず無愛想で無口ね。

『スマイル、今の時間は…』

「3時12分です。」
『はぁ。おやつの時間、過ぎてるじゃない。早く帰りましょう。』

腕が解放されて次のことを考える。
スマイルはすぐに帰る体制に入っているが、私はスマイルを見つめたまま椅子から立ち上がらずにいた。

「………お嬢様、帰るのではないのですか？」

『あら。私、すっごく怖くて寂しかったわ。』
「………？」

それでも伝わらない。
あぁもう。仕方ないわね。

『…右手がお留守なの。なんとかして？』

「…はぁ。相変わらずですね。」

そう言いながらも手を握ってくれるスマイルも、つくづく私に甘いなとおもう。
外に出てみると、空は紅茶のような色に染まっていた。

『スマイル。今日のおやつは苺のショートケーキがいいわ。紅茶もそれによく合う物で。ね？』

「まったく。そんなんでは、いつか太ってしまいますよ？」

『なっ？！……そんなこと言うなんて貴方は乙女心の扱いがなってないんじゃないの？？』

いつもに増してじとーっとした目で言われた言葉。
それにむかっとした私はそう言い放って、彼から離れて行く。

ムカムカとした頭で、私は周りを見れずにいた。

そう。気がつけば目の前に車道があったことも。
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