◇蒼色の景色に恋をして---kn ページ9
《奴 隷パロ》
ふと空を見上げた。
そこには青空なんてなく、雲に包まれ薄暗くなった空だった。
ある日、私は奴 隷売り場の人間に捕らえられた。
ただ私は海の空を旅していただけだったのに。
''ドラゴンと人間のハーフなんて大金で売れる！''
と大はしゃぎした人間に、この鳥籠に鎖で結ばれてもうじき一ヶ月。
最初は抵抗をした。
私を買おうとする人間には牙を剥き、売り屋の命令を聞かずにただただ逃げようとしていた。
もう一度、あの蒼色の景色を見たくて。
でも、いつの日か体力は落ちて、抵抗すらできなくなった。
体を鉄格子に預けて空を飛んでいく鳥達をみる。
「……。」
気がつけば側に人間がいた。
もういい。私はコイツに買われよう。抵抗なんてできないんだから。
「……こんにちわ。お嬢さん。」
人間は私の目線に合わせる様にしゃがみ込んで話しかけてきた。
変な奴だ。前来た奴らは皆、上から目線で自分勝手に話を進めていたから。
少し、少しだけ、人間の顔が気になった。
チラリと声のする方向に顔を向けた。
私は、その見えた景色に驚いた。
『……あ、お…』
「？…あぁ俺の目？」
『うみ…あの、海と、おなじ…』
深く被ったローブと、黒い艶々とした前髪から覗き込む蒼い瞳は、私が大好きな海と同じ色だった。
鉄格子の間に手を滑り込ませてその蒼色へと伸ばした。
「…ふふっ。気に入ってくれたの？」
『むかし、たび、した海、と、おんなじ色…』
「へぇ〜。俺も見てみたいな。……ねぇ、」
そう言って人間は私の手を優しく包み込んだ。
そして、その真っ直ぐな瞳でこちらを見てこう言った。
「ーーー俺に、その景色を見せて欲しい。だから、俺のところに来ない…？」
あったかくて、でも少し熱っぽい。
そんな貴方の瞳に恋をしたみたいだ。
私の大好きな、あの海と同じ色。
貴方と一緒にその海を見れたなら、きっとそれは何よりも幸せなんだろう。
私はゆっくりと頷いた。
．
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作者名：長月チョコ@09 | 作成日時：2023年10月12日 18時
