白い尾っぽの短編集 (ページ3)

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◇喉に通した感情を---kr ページ3

《嘔吐注意》

口の中が気持ち悪い。
私は何分もの間、トイレにしゃがみ込んでいるのだろうか。

元々、私はストレスが溜まりすぎると食事が喉を通らなくなってしまうことがあった。
食べることができても少量だったり、すぐに吐き出してしまったりと、
色々と厄介体質なのだ。

『ッはーっ、ッはーっ……ぅッ？！』

今日はいつにも増してひどい。
もうじきトイレに入り込んでから30分を過ぎそうな気がする。

体力的にも、精神的にも疲れ果てた私は力を振り絞って彼氏であるきりやんに電話をかけた。
２回コールがなった後、機械音に続いて聞こえてきたのは私の大好きな声だった。

「A？どした？大丈夫？？」

『うっ…ごめっ、きぃやっ…くるじぃ…』
「？！ちょ、すぐ行くから！！」

既に何度かこう言う経験があったので、すぐに理解してこちらに向かってくれる。
向かってる間も、私が寂しくならない様に。と電話を繋げてくれていた。
そんな彼の優しさに、思わず胸が痛くなる。また迷惑をかけてしまった。

「Aッ？！大丈夫…じゃないよなっ……よしよし…」

『うぅ…きりやっ…』

「うんうん。大丈夫大丈夫。俺はここにいるから。」

彼の大きな優しい手で背中をさすってもらうとだんだん落ち着いてくる。
ある程度心に余裕ができると、すぐに彼は口を濯いでくれ。と水を渡してきてくれた。
本当に、どこからどこまでも彼は優しかった。
そのまま気づけば目からは大量の涙がこぼれ落ちていた。

「よしよし。……何かあったならちゃんと言って？」

『うぅっ…じ、じつは…』

彼に優しく絆されれば喉に突っかかっていた日々の苦しみ、悲しみがありえないほどにでてくる。
仕事の同僚に冷たくされたことから、近所の猫に引っ掻かれた。などの、些細なこと。
それでも積もってしまえば大きな負担になる。
いつもは口に出せずにいる感情が喉を通って吐き出される。
そんな私を見捨てず、今もなお隣に居続けてくれる彼には感謝しかない。

「そっか…辛かったね。よくここまで耐えてたよ。」
『うぅ…ひっ…』

「でも抱え込みすぎちゃダメだよ？Aの体が壊れて苦しくなるのはAだけじゃないからね。」

『うん……がんばる…』

「それは耐えるのを？抱え込まない様にするのを？どっち？」
『かかえこまない、ように……がんばる…』

「ん。いい子いい子。」

その後は一杯彼に甘えて瞼を閉じた。
朝、隣に彼がいることを驚くのは言うまでもない。