◇桜の少女---nk ページ18
《怪異パロ・ちょっと暗い・恋愛無し》
ただただ、俺は森の中を歩いていた。
森の奥から聞こえる淡い光に誘われて。
光が強くなった時、少しの違和感が俺を包む。
するとそこは開けた空間だった。
「っは……さ、くら…？」
森の一部を円のように取り除いたその中心には、大きな桜の木があった。
赤のような桃色のような、少し不気味な色の花。
磁石が近づくように、俺はその桜へと足をすすめた。
すると、桜の上の方に何かが垂れているのがわかる。蛇…？と思ったが
動かないため何かの紐だろう。
一歩、もう一歩……と桜に近づいていく。
その度に体が重いような、息苦しいように感じていく。
それでも、俺の頭と脚は桜へと近づいていく。
『なーにしてるの。』
「うわっ？！！」
桜に手を伸ばした瞬間、女性の声と共に体が後ろへ引っ張られた。
被っていたフードが取れたところから見て、フードを引っ張られたのだろう。
『まったく。こんな夜中に森に来るのは危ないよ。おにーさん？』
後ろをみると、白いマフラーをつけた黒いセーラー服の少女が頬をふくまらせていた。
『ちょっとー？聞いてんのー？？』
「っあ、ご、ごめんなさい…？」
『ふふっ。なんで疑問系なの。帰り道、わかる？』
そう聞かれてあたりを見回した。
だが、俺が歩いてきたはずの道はどこにも見当たらない。
「あ、え？あれ……俺、どこから…」
『………はぁ。しょうがないな。こっちだよ。』
少女は桜とは別の方向へと歩いていく。
大人しくついていくと、いつのまにかさっきまでの道に出ていた。
「あ、ありがとうございます…！」
『……ふふっ。どういたしまして。もうここにはきちゃダメだよ？』
「は、はい…」
そう言って少女と別れた。
しっかりとした高校生だったなぁ。
「………あれ、帰らなくて良いんですか？…って、え？」
後ろを振り向くと、すでに少女はそこにはいなかった。
一体なんだったのだろう…そう思ったが、本能が
ここからは去れと言っていたので特に気にせずに帰路に帰った。
そういえば、あの子の目はあの桜の花弁みたいだったなぁ。
．
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作者名：長月チョコ@09 | 作成日時：2023年10月12日 18時
