ファンだけどファンじゃない-3-

最悪の日 ページ20

その日、出社すると真っ先に会議室に呼ばれた。

編集長｢どういうことか、説明してくれ｣

出された週刊誌には、こう書いてあった。

【コムドットやまとの恋人、今度の相手は有名作家？】

｢2週間前、コムドットやまとの初著書｢聖域｣の最多重版を記念したパーティーが開かれた。そこにはお揃いのペアリングを付けるやまとと担当兼恋人のW。仲睦まじく話している様子は仲良しな美男美女カップルそのもの。しかしこの日の深夜2時、Wは有名作家である高橋直樹氏の家に静かに入っていく。その後出てきたのは朝方5時。少し乱れた髪と疲れている顔はまさに男女の情事後のように見える。｣

A｢なにこれ…｣
先輩｢ひどいのはその後｣

｢パーティーの最中も有名作家である藤山と話しているところに突如現れたのはコムドットのメンバー、ゆうた。藤山と話していることに嫉妬したのか少しお怒りの様子。藤山氏によるとやまとと付き合う以前に自身もWに思わせぶりな態度をとられたため、その真意を聞こうと思ったらゆうたが妨害してきたと。何人の異性を手玉にとるつもりなのか……｣

A｢そんな…｣
編集長｢本当に高橋先生の所に行ったのか？｣
A｢行きました。この日が高橋先生の原稿の締切だったんですけど、なかなか書けずに追われていて…連絡をもらったのが深夜の1時半だったので取りに行って、そのままお家でチェックをして家を出たんで、何もやましいことはなく｣
先輩｢それは分かってる。ただ…ゆうたくんも槍玉にあがってて藤山先生が直接取材を受けてるから何を言ってももう…｣

A｢すいません…｣
編集長｢前みたいに収まる話じゃなくなってぞ。責任をとれ｣
A｢わかりました…どうすれば？｣

編集長｢愛知の事業所、分かるな？｣
A｢…名古屋のローカル紙を出している部署ですか？｣
編集長｢そうだ。来月からそこに出向しろ。｣
A｢…そうしたら、丸く収まるんですか？｣
先輩｢今、うちに来てるメールやTwitterでのコムドット関連の書き込みは全部この記事に対する批判なの。｣

先輩が恐る恐る見せてきた内容はひどかった。

『やっぱり。尻軽女だと思ってたけどひどい』

『やまとくんだけじゃなくてゆうたくんまで』

『コムドットから離れろ。きもい』

『コムドットのファンを馬鹿にしてる』


先輩｢…これだとAさんだけじゃなくてコムドットまで危うくなるよ。｣


最良の判断はもうそれしかなかった。

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