イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ8)

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208.癒し系。ページ8

「これ、何ですか？」

封筒の中を覗こうとしたら、「だめ！家で一人で見て？」って。

「ほらほら！ニノに見付かる前に鞄に入れちゃって！」
「えっ！？あっ、はい！」

何だか慌てた様子で言われたから、私もつられて慌てて封筒を鞄に入れる。

「お待たー」

私が封筒を入れたと同時に二宮先生が戻って来て、もう大野先生は何でも無い顔をしてる。

「相変わらず、おばさん綺麗だな」
「そう？普通だよ」

大野先生がちょっと困ったような顔で返す。
お母さんの話に対する態度が、何だか高校生男子って感じで可愛い。

「大野先生のお母様、美人なんですか？」

座ってる私の前に立って、手を引っ張って立ち上がらせてくれた二宮先生に訊いてみた。

「あー...大野さんを女にしていくらか年齢重ねさせた感じ」
「って事は、先生は大野先生を美人だと思ってるんですね？」
「はぁ？」

大野先生が「やだぁ」ってクネクネしてる。

「まぁ女だったら綺麗だったんじゃね？もったいなかったね、男で残念」

ケケって笑った二宮先生のお尻を、大野先生がパコンと膝で蹴った。
着物の裾がハラリとはだけて、妙な色気。

大野先生とお別れして、料亭を出る。
お店の前で大野先生は姿が見えなくなるまで手を振っててくれた。

「やっぱり癒し系」
「大野さん？」
「うん」
「あーゆーのが好き？」
「えっ！？好きって言うか...嫌いじゃないけど、何と言うか...」

好きなのは、癒しなんてほとんど感じなくていつだって落ち着ける暇なんて与えてくれないような人です...。

「オレも癒し系目指してふわふわしてみよっかな」
「えっ！？やだ！」
「え？」
「あ...先生はそのまんまが...良いです...」

癒して欲しいなんて、思ってない。
このままじゃドキドキで死んじゃうんじゃないかって何度も思ってる位だけど、それでも良いの。

それが良いの。

「ンフフ。じゃ、遠慮無くこのまんまでいさせて貰うわ」

先生の横顔が、フっと緩む。

ほらまた。
こんな些細な事でも、心臓がビックリする位に縮んでしまう。

「さて、これからどうしよっか」
「あー...そうですね、どうしよう...」
「もしリクエストが無いなら、一応候補はあるけど」
「え？候補？」
「ダッシュボードん中、見てみ」

言われた通り、目の前のそれを開けて中に入ってたプリントアウトされた紙を取り出す。

「...水族館！？」

イルカがジャンプしてる写真を見て大きな声を出してしまった私に、先生は大笑いした。