イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ30)

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230.遊戯。ページ30

手を引かれて初めて入る寝室。

電気の点いてない暗い部屋はシンプルで、壁に寄せるように置いてあるベッドと小さめの本棚しか無い。

先に先生がベッドの淵に座って、それから私が引っ張られるようにしてその隣に腰を落とす。

すぐに頬を掌で包み込まれて、さっきの続きとばかりに唇が重なる。

喉の奥が、悲鳴を上げるのを我慢してるみたい。
その我慢のなれの果ては、小さな吐息になって私の口から溢れ出る。

「舌、出してみ？」

先生の囁きに従うと、更に深くなる口付け。

これだけで、もう全身が融けてしまいそうなのに

私...これからどうなる？

肩に体重を掛けられベッドに倒れると、先生が腕を立て私の上に覆い被さって見下ろして来た。

「もう、やめてって言われてもやめらんないよ？」
「...やめないで...」

呆れたように先生が笑う。

「こんな子と一緒に居て、オレよく我慢してたわ...」
「...もう我慢なんてしないで...」
「お前、さっきから破壊力すげぇぞ。殺す気か」

ちょっと少年のような顔を見せた彼が、すぐに大人の男になる。

これなら大丈夫！って思ってた下着も、いざそうなると子供っぽくないか気になって隠したくて

でも先生はそんな私をすぐに分かって「大丈夫、可愛いから」って、耳元で囁いてくれた。

初めて触れた先生の肌は、やっぱり少し冷たくて

華奢だなって思ってた身体は、細いけど女の子とは全然違った。

「声、出ちゃう？」って訊く意地悪な声も

「痛い？」って訊く優しい声も

艶っぽい、吐息交じりの声も

どの声も、耳の奥を擽って行く。

先生の声は七色だと思ってたけど、そんなもんじゃなかったんだ。

身体の中が、先生に満たされる。

隙間が無くなる。

「...A、大丈夫...？」

どの瞬間よりも、柔らかい声。

「...うん、っ...」

先生の背中に回してる腕に力が入って

自分の胸に引き寄せるように、その背中を抱き締める。

揺れる貴方が愛しくて

髪を梳く指まで愛しくて

上下する喉仏も愛しくて

「...好き...」

彼の動きが一瞬止まる。

「A...」
「好きです...もう、ずっと。何年も何年も、先生しか見えなかった...」
「......」
「重いですよね...」
「アハッ、重いね。でも、軽い『好き』なんて貰っても嬉しくも何とも無いけど」

貴方は、私の重すぎる想いも笑って受け入れる。

「オレも、重ーく好き。Aのこの細い腕で受け取れるかな？」

全身に甘い蜜を掛けられてるような気がした。