イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ27)

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227.不正解。ページ27

「せんせ...」

呼び終わる前に、先生の唇が触れて欲しかった場所に触れた。

いつものように、軽く触れて

一瞬、離れる。

先生が小さく息を吐き出すと、もう一度唇が触れて

その唇が薄く開き、私の下唇を食べるように柔らかく挟んだ。

ゾクリと背中が泡立った。

だけど、嫌なんじゃない。
気持ち悪いんじゃない。

その逆。

何度か繰り返して、唇を喰まれ

身体に力が入った。

その瞬間、先生の唇が離れる。

「...ごめん」
「え...？」
「もう遅いから送るよ」
「.....えっ...」

送る...って...

「私...明日、仕事休みなんです...！」
「そっか、じゃあ明日も会えるんだな」

ニコリと微笑む先生に頬を撫でられても、今は喜べない。

「.....もう...良いです...」
「A？」
「帰ります、送ってくれなくても大丈夫です。1人で帰れます」

頬に触れてる先生の手を払うようにして立ち上がり、そのまま鞄を持って玄関へと小走りで向かった。

「A！ちょっと待て！」

先生に腕を掴まれ、持っていた鞄が落ちて

中から歯ブラシや、メイク落としや、下着を入れてるポーチが床に散乱した。

「...お前、これ...」

慌てて座り込んで散らばった物を鞄に入れてると、何故か涙が込み上げて来て目を閉じる。

「...先生が一番、私を子供扱いしてます...」
「.....」
「私は大人だって...言ってくれたのに...！」
「A...」
「そんなに私には魅力が無いですか！？重いんですか！？何がいけないんですか！」
「.....」
「...もう...分かんないです...」

もう、先生の顔は見れなかった。

鞄を抱き締めそのまま玄関を飛び出して、走って、走って、走って

足を止めると、逆に涙はどんどん零れた。

...もう、駄目かもなぁ...
先生に、呆れられたかもしれない...

冷静になると、自分がしてしまった行動に後悔。
情けなさにまた泣けて来るけど、やっぱり悔しくて悲しくて、頭も心もぐちゃぐちゃ。

せっかく恋人になれたのに...

私、バカだ...

大切な物、全部、自分から捨ててしまったような気分になって立ち尽くす。

「...A」

周りの音、何も聴こえなくなっていた耳に届いた声。

振り返ると、先生がハァ...と溜息を零した。

「何なの。追い掛けて来ると思ってたワケ？」
「.....」
「駆け引き？」
「......」
「オレ、そーゆー面倒臭いの一番嫌いなんだけど」

冷たい目。

先生の言葉に、自分の行動が不正解だったと知る。

私は、間違えたんだ...。