イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ25)

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225.グルグル。ページ25

「オレら、帰るトコだったのよ」

先生がそう言うと、彼らも「そうなんだ」「引き止めてごめんな？」ってにこやかに言う。
人柄の感じは...全然悪くない人達なのに...

「せっかく久々に会えたのにごめん。また連絡してよ」
「おう、また今度ゆっくり飲もうな」
「A、帰るよ」

私の腕を掴んで立たせると、先生は「じゃあねー」って彼らに手を振ってお会計を済ませて店を出た。

パーキングまでの道、繋がれた手。

ギュっと握り返す事が出来ない。

「どったの」
「...何でも無いです」
「何でも無いなら、何でそんな顔してんの」

ブニっとほっぺたを人差し指でつつかれる。

「アイツらが言った事、気にしてる？」
「......」
「悪気は無いんだよ？気の良い奴らだし」
「...それは分かってます...」

先生のお友達なんだし...
先生は変な人とは付き合わないだろうって、何となく分かってる。

「今日は酔っ払ってたしね。許してやって？」
「......うん」
「ごめんな」
「ううん...怒ってる訳じゃ無いから...」

先生と同い年の彼らが、私を『若い』って。
まるで子供に言う感じで『可愛い』って言った。

先生の目にも、私はそんな風に映ってるのかな...って思ってしまう。

だから、何もしてくれないのかな...
先生の中ではやっぱりまだ私は、うんと年下の子供のまんまなのかな...

そう思ったら、全部納得できる。
子供の私にはオトナのキスなんて出来ない。
それ以上の事なんて、考えられないって事なのかもしれない。

処女なんて...よく考えたら重いのかもしれない...。

「A？」

車に乗ってもそんな事ばっかり考えちゃって何も話さないしきっと相槌すらろくに出来てない私に、先生は苛立った感じも見せずに声を掛けてくれる。

「このままAん家に送るつもりだったんだけど」
「......」
「もうちょっと一緒に居ようか」
「...え...？」
「オレんちに連れて帰るけど、良い？」
「先生んち...」
「やだ？」

勢いよく先生の方を見てしまって

でも先生は、前を見たまんまで

だけど、その口元が緩く微笑む。

「...やじゃない...」

先生の手が伸びて来て、私の頭をポンポンと撫でた。

やっと私を受け入れてくれるのかな...って思ったら、胸が痛い位にギュウ...ってなる。
私、やっと大人にして貰えるのかな...って思ったら、息するのもちょっとしんどい。

だけどいつだって、覚悟はしてたんだから。

お泊りセットが入ってる鞄を、ギュっと抱き締めた。