イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ24)

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224.色んな気持ち。ページ24

こういう時、ちゃんと挨拶しなきゃダメだよね！？って立ち上がって「結城Aです、初めまして」って頭を下げる。

「うわ、可愛い」
「え、ってゆーか可愛すぎない？」
「二宮って高校教師だったよな、まさか生徒とか？」

生徒...その言葉に、ドクンと胸が軋む。

「現役の生徒じゃねぇよ。元、生徒」

別に隠すでも無くそう言ってくれた先生にホっとしてると

「マジで！？」
「淫行になんないの！？」
「現実にあるんだ、そんなアダルティな展開！」

予想してなきゃいけなかったのに、全然心構えしてなかった会話が彼らから出て来た。

「ご期待に添えなくて悪いけど、Aはもう二十代だから淫行にはなんねぇし在学中は何も無かったからアダルティでもねぇよ」

だけど先生は何でも無いように平気な顔で答えて。

彼らも「そっか」って普通に笑ってて。

何だか力が抜けて、椅子にストンと座る。
先生がチラっと私を見た。

「なぁ二宮、乾杯しない？一杯おごるし！」
「あぁ、オレ車なのよ」

申し訳無さそうに先生が手を合わせる。

「彼女に運転して貰ったら？」
「あー、俺も飲みに行く時は嫁に運転して貰う」
「うちは嫁も飲みたがるからいつもジャンケンしてるわ」

当然のように繰り広げられる会話に、先生は頭をポリポリしながら「いや、良いや。ごめんな？」って苦笑い。

「あ、そっか。彼女若いから...」

その言葉の中にはきっと『免許無いんだ』って意味が含まれてる。
別に若くたって免許持ってる子は居るし...何で私、免許とって無かったんだろう。悔しい。

「ってゆーか、彼女ホント可愛いな。純粋そうで」
「うちの嫁も結婚した時は可愛かったのに」
「年齢と共に逞しくなるんだよ、女は」

若林さんに『可愛い』って言われたのは、素直に嬉しかったのに。

この『可愛い』は、若林さんが言ってくれたそれとは意味が違うって分かる。

全然嬉しくなくて、上手く笑う事すら出来ない。

「あ、彼女困った顔しちゃった」
「ごめんねぇ、オッサン達に絡まれて迷惑だよね？」
「オッサン、若い子と喋る機会なんて無いから浮かれちゃって！」

アッハッハ！って笑ってる彼らに、恨みなんか無いけど。

「いえ...」って笑ったつもりだったのに、やっぱり笑えない。

残ってる烏龍茶を飲むと、無意識に溜息が漏れた。

「ちょっと。人の彼女に気安く絡まないでくれます？」

先生が、彼らに薄く笑いながら言う。

感情がめちゃくちゃで、泣きそうだ。