イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ23)

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223.天国。ページ23

お店の奥にあるテーブル席に向かい合わせで座ると、おばさんがお冷を持って来てくれた。

「二宮くんはビールで良い？」
「あー、オレ車なのよ。烏龍茶で」
「二宮くんが車！？大人になってぇ...」
「やめてよ、自分の車が無かったってだけで運転は18の頃からしてたよ？」

眉を下げてアハ、って笑う先生を見てると自分のお母様にもこんな感じなのかなぁ？なんて
想像しちゃう。

「Aも烏龍茶？一杯くらいなら飲んでも許すけど」
「ううん、烏龍茶で！」

先生がお酒好きなの知ってるのに私だけ飲むのは申し訳ない。

「気ぃ使ってんじゃないの？」
「気ぐらい使わせて下さい」

私の答えに先生は「ホント、想像の斜め上を行くよね」って片方の口角を上げた。

お酒を飲まない私達は、居酒屋さんだけどしっかり夕食を食べた。
先生オススメの肉じゃがと、私が食べたかったアスパラベーコン。
おばさんが「豚汁もあるよ」って出してくれて、どうせならって浅漬けも頼んで白ご飯。

『安くて美味い学生街の天国』と先生が称するお店でお腹いっぱいになって、さて帰ろうか...ってなってる所に

ガヤガヤと入り口から数名の男性が入って来た。

その中の一人がこっちを見て「ん？」って首を傾げる。
そして、お仲間に何か言うと皆がこっちを見た。

「え...？」

思わず私が声に出すと先生が「どした？」って言うから、目でその男性達を示す。

「何よ...あ」

彼らを見た先生が口をカパって開けた。

「やっぱ二宮！」
「うっわー！懐かしい！！」
「マジか！久し振りー！」

一斉にワァ！と騒ぎ出した彼らがワラワラと席に近寄って来る。

「おぉ！すっげぇ久し振りじゃん！」

先生も立ち上がって、握手とか始めちゃってる。

「あ、A。コイツら大学ん時の友達」
「え？あっ...そうなんですか？」

同級生って事なんだろうけど、先生よりも彼らは結構大人に見えちゃって

やっぱり先生ってちょっと幼いんだな、って再確認。

「お前ら、今でもここで飲んでんの？」

先生が楽しそうに彼らと話す。

「いや、たまたま！さっきまで違う店で飲んでてさぁ」
「何か久し振りにあそこ行かね？ってなって」
「まさか二宮も居ると思わなかったけどな！」

「オレもたまたまなのよ」って先生が笑う。
大野先生と居る時とはまたちょっと違う雰囲気で新鮮。

「それより二宮」
「ん？」
「その子は？」

一人の視線が私に向く。

「あぁ、彼女」

先生の答えがおしぼり投げたい位に嬉しい。