イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ22)

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222.学生街。ページ22

「ちょっと、同じ視線になった気がしない？」

そっぽを向いてる先生は、後頭部しか見えない。

「同じ？」
「ここはオレとお前が18から22までを過ごした、共通の通過点」

くるんって、先生の顔がこっちを見た。

「食堂のきつねうどん、超旨くなかった？」
「あっ！うん！お揚げが大きくて大好きでした！」
「図書館の奥ーの方にヒッソリ春画集あるの知ってる？」
「フフッ、知ってます」
「お！見た？」
「先生こそ、見たんですか？」
「見たよー、昔の人はえろいなーって思いながらね」

顔を寄せ合うようにして、クスクス笑う。

「ほら」
「え？」
「通ってた時期は違っても、ここには同じ思い出がある」
「先生...」

繋いだ手を引かれる。

「あの校舎も」

煉瓦の壁を指差して

「あの自販機も」

カップジュースの自動販売機を指差して

「あの渡り廊下も」

校舎と校舎を繋ぐガラス張りの廊下を指差して

「オレの思い出にも、Aの思い出にも存在してる」

先生の横顔が、微笑んだ。

「何かね、そーゆー場所にAと一緒に来たくなって連れて来ました」

目が合って

もう、死んじゃいそうな程にドキドキして

「私...」
「うん」
「やっぱり、この学校を選んで正解でした」
「そっか、そりゃ良かった後輩よ」
「はい！先輩！」
「アハッ、何か変な感じすんなぁソレ」

こんな未来が待ってたなら、どんなに不純な動機だって私の選択は大正解だったんだ。

「さぁて、暗くなって来たしそろそろ行くか」

先生が正門の方へと歩き出す。

「腹減らない？」
「あ、そうですね」
「近所に学生時代よく行ってた店があるはずなんだけど、まだあるかな...」

学校を出て、学生街を歩く。

私といろはちゃんは、どちらかと言うとこの街ではそんなに遊ばずに違う街に出てた。
だから、この辺の事はそんなに知らなくて。

「あ、あるわ！」

昔からあるんだろうなぁって佇まいの、味のある居酒屋さん。
先生がそのお店を見て、嬉しそうな顔をする。

「ここの肉じゃが、美味いんだよー」
「肉じゃが好きです！」

暖簾をくぐりながら、先生が「こんばんはー」って挨拶した。

「いらっしゃい！あれ！？二宮くん？」

カウンターの中に居たおじさんがビックリした顔をして、お客さんにビールを出してたおばさんも「やだ！二宮くんじゃない！」って笑った。

「お久し振りです」

ニィっと笑った先生が「オレ、ほぼ毎晩ここで飯食ってたの」って少年みたいな顔をする。