イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ14)

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214.COLORFUL。ページ14

お風呂に入って、気持ちも身体もほぐれてベッドにゴロンと寝転がった時

ふ、と思い出した。

「あ...そう言えば大野先生、何くれたんだろ...」

ベッドから降りて、鞄の中の封筒を出す。
外からでは何が入ってるか分からない。

何の気無しに、その中身を出してみた。

「.....え...」

カシャンと軽い音と共に出て来たそれを見て、一瞬息が止まった。

心臓が早打ちになって、止めてた息を慌てて吐き出した。

封筒の中に入ってたのは、1枚のCD。

『無彩色デモ』って、ケースにメモ書きが挟まってる。

間違いない。
見間違える筈が無い。
これは、先生の字。

無彩色って...大野先生、言ってた...

『ミルクティー』の最初のタイトルは『無彩色』だったって。

そのデモって事は...

急いでノートパソコンを開いて、そのCDを入れる。

焦ってるのか、入れるまでに2回もCDを落としてしまった。
イヤホンを繋ぐのも、手が震えてなかなか繋げなかった。

耳に流れて来るのは

ギター一本で歌う、先生の歌声。

高いような、低いような、甘いような、泣いてるような

私の大好きな、先生の歌声。

こんなメロディーだったんだ...

目を閉じて、身体を小さく丸めて、全部の意識を耳に集める。

【その真っ白な唇で
　僕に触れてはくれないか】

【誰の物でも無かった唇に
　触れさせてはくれないか】

初めてキスした日の事を思い出して、膝をギュウっと抱きしめる。

語りかけるような先生の歌声に、もう心臓が潰れちゃいそう。

【いつか君を、とは言えなくて】
【いつか君と、とも言えないけれど】

【いつか君に、想いを伝えられるだろうか】

一度、文字で読んだ歌詞なのに

先生の声で旋律に乗ったそれは、知らない歌のようで

【君が僕の世界を極彩色に染めてくれるなら】

【僕はきっと照れ隠しに苦笑いするだろう】

気が付くと、涙が止まらなくなってて

今日たくさん見た苦笑いしてる先生の照れた顔を思い出すと、アハ、って笑いが溢れた。
笑いながら、泣いた。

何度も繰り返して、先生の歌声を聴く。

泣き過ぎてる自分が面白くなって、また何だか笑っちゃって。

でもやっぱり、涙止まらなくて。

もう、何回聴いたんだろう。
何回聴いても、また聴きたくて。
自分でも分からないまま、知らない内に眠りについた。

先生、私は先生の世界を極彩色に染められていますか？

先生、私の世界は目がくらむ程にカラフルです。