イロコイ・ライン 6th【ars K.N】 (ページ1)

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201.七色。ページ1

待ち合わせは、うちの近くのコンビニにしてた。

そこなら駐車場もあるし、マンションの駐車場では私が落ち着かない気がして。

約束の時間、コンビニに行くと先生の車が停まってる。

それだけでドキンとして、これから始まる一日が楽しみで頬がゆるゆる。

車に駆け寄って運転席を覗く。

「...あれ？」

でもそこに居ると思った先生は居ない。
窓に顔を付けるようにして、後部座席まで覗き込んでみる。

「こら、車上荒らしか？」
「えっ！？」

背後から肩を押さえられてビックリして振り返ると、先生。

「ハハッ、おはよ」
「あー...ビックリした...おはようございます」
「ちょっと早かったけど、眠たくない？」
「全然！」

昨日先生に言われた待ち合わせの時間は、確かにちょっと朝早くって

先生が『夜更かしするな』って言ったのも、納得できた。

「早起きはカフェの早番で慣れてますから」
「あー、そっか。オレの方が眠たいかも」

そう言って、先生はコンビニの袋の中からレッドブルを出して笑った。

車に乗り込むと、先生はカーナビをセットし始める。

「どこに行くんですか？」
「ちょっと遠出して、昼飯食おうかなーと思って」
「遠出？どの辺まで？」
「海の方まで」

私にミルクティーのペットボトルが差し出される。

「眠たくなったら、寝てて良いから」
「ううん、きっと眠たくなんかならないです」
「車の揺れは眠気誘うぞー？」

ククって笑って、先生は車を発進させた。

ペットボトルを開けて、一口飲む。
先生の部屋で見た、あの歌詞を思い出す。

「先生、ミルクティー苦手？」
「甘いからなー...って、いや、お前何で今それを訊くんだよ」
「え？ううん、何となく」
「絶対しょーもない事思い出したろ！」
「しょーもなくなんて無いですよ？」

私が笑うと、先生は子供みたいに「クッソー..」って呟いた。

耳が真っ赤になってて、可愛い。

先生が買ってくれてたコンビニ袋の中から、チョコベビーを出して食べる。
時々、ザラザラと中身を振って。
時々、先生の口に入れてあげて。

ipodが繋がれたステレオから流れるのは、J-POPだったり全然知らない洋楽だったり。
知ってる曲の時に小さな声で歌ってたら、先生がハモってくれた。

「先生、やっぱり上手ですね」
「好きなだけだよ」

先生の歌声が好き。

どんな歌手の歌声よりも、先生の歌う声が好き。

喋ってる時とも、笑ってる時とも違う声。

先生の声は、七色だ。