イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ25)

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185.お願い。ページ25

暫くお喋りした時。

「あ、そうだ」

いろはちゃんが、手を鳴らした。

「私、先生にお願いがあるんです」
「オレに？」

うんうん、って頷く彼女を見て先生は私をチラっと見る。
でも、私も結局何のお願いをするのかは教えて貰えなかったから首を傾げる。

「お願いって言っても、そんな難しい事じゃなくって簡単な事なんです」
「何だろう」
「Aちゃんと付き合うって事が、どうゆーコトかちゃんと分かってて欲しいんです」
「ん？」
「Aちゃんにとって、先生が初めての彼氏だってコトはご存知ですよね？」

「いろはちゃん！？」って、私が慌てても彼女は先生をジっと見てる。

「うん。知ってる」
「だったら、分かって貰えますよね。私がお願いしたい事」
「大丈夫。何も心配しなくて良いよ。オレもちゃんと考えてるし覚悟もしてるから」

先生の言葉に、いろはちゃんが安心したように微笑む。

「ねぇ、いろはちゃん、どーゆーコト？」

何か私だけ取り残されてる感。

「Aちゃんは本当に何も知らないから、って事」
「え？」
「フフッ」
「えぇ？」

先生をチラっと見ると、ソファに沈むように座ってコーヒーを美味しそうに啜ってる。

「あ、私そろそろ行かなきゃ！」

突然いろはちゃんが立ちあがった。

「えっ？今日は時間あるって...」
「あー、急用が入って！それも、たった今！ごめんね、Aちゃん！」

そそくさと上着と荷物を持って、いろはちゃんは「先生も、ありがとうございました！」って出て行って

その後すぐに『せっかく会えたんだから、先生とゆっくりして！』ってLINEが届いた。
今度、お礼にお酒でも御馳走しなきゃ。

「...ねぇ、先生」
「んー？」
「いろはちゃんのお願いって結局何だったんですか？」
「分かんない？引き出しが無かったら分かんないか」

何か馬鹿にされたような気がして、むぅ...っとなった私に先生が身体を近付けて

ピタっと隙間が無くなったと思ったら、耳元に口を寄せられた。

「お前は処女だから、大切にしてやれってコトかな」

低く、小さな囁き声。

「はっ！？」
「フハッ、まぁそれは極端だけど。全部オレが初めてになるから、適当な扱いすんなよ？って事でしょ。良い友達じゃん」
「じゃあそれだけで良いじゃ無いですか...別に、しょ...」
「処女？」
「ちょっ...！」

先生を睨む。

「お前が操を立ててたのは、オレの為？」
「......」
「ンフフ、何とか言いなさい」

結局その目に、融かされそうになる。