イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ21)

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181.どんな。ページ21

その日の夕方、私は普段あまり来ない街に来ていた。

仕事終わりのいろはちゃんと会う為。
舞台の取材をした後が空いてるって事だったから、少しでも時間を無駄にしないように私がその劇場がある街まで行って彼女の仕事が終わるのを待っておく約束をしていた。

駅前のベンチに座って人間観察なんかをしてると、向こうから走って来るいろはちゃん。
何か、もう既にケラケラ笑ってる。

「アハハ！Aちゃーん！」
「何笑ってんの！」
「だって、もう片想い中のAちゃんじゃなくなってるんだと思ったらさぁ」
「やっ、何それ」

いろはちゃんの腕をペシンと叩くと、彼女が「やだ、何か可愛くなってる！」なんて言うからもう一度ペシン。

「そこのカフェで良いよね」
「うん」

駅前にあるチェーン店のカフェに入る。
タイミング良く空いた奥のソファ席を確保して、いろはちゃんは「すっごい寒いから」って理由であったまりそうなホットココアを注文。
私はホットのロイヤルミルクティ。

そのロイヤルミルクティは、とっても美味しかったんだけど

先生が淹れてくれたミルクティの方が美味しかったって思うのは、単なる贔屓目なのかな。

「いろはちゃん、仕事はもう終わり？」
「うん。今日の取材はマチネだけで、直帰」
「仕事、楽しそうだね」
「お陰様で」

相変わらず綺麗な笑顔。
やっぱり絶対に女優さんにだってなれる。

「スカウトとかされない？取材した劇団の人とかに」
「えー...？」
「あ、あるな。その反応は！」
「私の事なんかどうでも良いから！それより...」

いろはちゃんがテーブルを乗り越えて来そうな勢いで、前のめり。

「どーゆー経緯で付き合う事になったのか、事細かく教えて貰うからね？」

ニヤニヤしてる。
私も、きっとニヤニヤしてる。

『事細かく』と言った通り、いろはちゃんの質問は本当に細かくてさすが取材慣れしてるだけある...と思ってしまった。
私が答えると矢継ぎ早に詳細を引き出すし、答えるのを躊躇うと話しやすいように誘導される。

「もしや先生って、凄くロマンチスト？」
「え...？どうなんだろう、私にはすっごくリアリストに見えるけど」
「いやいや、普通の人は告白する時に『美女と野獣』なんて出して来ないから！」
「あっ...そ...なのかな...」

いろはちゃんがフフン、と笑った。

「どんな人なんだろう」
「え？」
「そんなロマンチックな事を言う人って」

頬杖をついた彼女が私をジィっと見て

何かを企んだ表情をした。