イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ15)

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175.嘘だ。ページ15

先生の言う通り、運ばれて来たハンバーグは本当に美味しかった。

お母さん手作りの感じって言うか、お店はこんなにオシャレなのに飾ってない家庭的な味のハンバーグ。
一口で、私もここのハンバーグが好きになった。

「ごちそうさまでした！美味しかったぁ...」
「だろ？」

おしぼりで口元を拭いてると、女の人がコーヒーを持って来てくれた。

「どうぞ、サービスです」
「あ、ありがとうございます」
「先生、お元気でしたか？」
「はい、見ての通り元気ですよ」

そのやり取りは、やっぱり知り合いっぽい。
しかも『先生』って呼んでるって事は...学校関係？

「ごゆっくりして行って下さいね」

ニッコリと私にも微笑んでくれた女の人が行ってしまってから、先生に「お知り合いですか...？」と訊いてみた。

「うん。教え子のお母さん」
「えっ！？良いんですか...そんな...」
「何で？」
「だって...」

あ...しまったー...また『だって』って言っちゃったよ...。
先生もそれに気付いたのか、片眉を上げて「ん？」って首を傾げる。

「...先生が教師だって知ってる人が居る所に来ても良いのかなって思って...」
「オレらは隠れなきゃいけない関係？」
「え...？」
「ちょっと歳が離れてるってだけでしょ」

ちょっとってのは厚かましいか、って先生が笑う。

「私、教え子だよ？」
「だなぁ」
「良いの？」
「良いから今一緒に居るんでしょうが」

ムニ、って鼻を摘ままれた。

「さっきからホントお前」

ハァ、って溜息。
やだ。ウンザリされてる...？

「言わなくても良い事はそうやって言うくせに、言わなきゃ分かんない事は全然言わないよな？」

少し口を尖らせて先生が話す。

「お前はオレに会いたくなかった？」
「え...？」
「全然、『会いたい』って言わないでしょ？」
「それは...」

鼻を摘まんでた指が離れる。

「今日もあのまま家に送り届けられたかった？」

フルフルと首を振る。

「お前が思ってる事を言うのは時々なんだよ。『連れ回されたい』とかさ」
「あっ...」

昨日の事だ。
思い出して、恥ずかしくなる。

「あれもオレは結構キュンと来ちゃったんだけどねぇ」
「えっ！？」

先生が私にキュン！？

「嘘だ！」
「嘘じゃねぇわ！」
「嘘だ...」
「オレの事は、どうするんだっけ？」
「......信じる...？」
「正解」

頭を撫でられて

「もっとオレに本音を見せてよ」

先生が少し寂しそうな顔をしたから

頭に乗ってるその手を握って、頷いた。