イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ10)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:2,323,680 hit

130.悲しくて。ページ10

うちに帰って、すぐ相葉くんにメールを送った。

時間が空くと、連絡し辛くなりそうだなと思ったから。

空メでも良いって言ってたけど、そうゆー訳にもいかないと思って『こんばんは。今日、カフェで先生の動画を見せて貰った店員です』って一言を添えた。

部屋着に着替えるのも忘れる程にソワソワしたまま暫くすると、スマホが鳴った。

開くと相葉くんからのメール。

『こんばんはー！あいばです！すだちの動画、送るね』

添付されてる動画ファイル。

ドキドキしてそれを開こうとしたら、もう一通メールが届いた。

『約束通り、メアドは消去するね！あ、おねえさんってニノちゃんの彼女さんだったりするの？』

その質問に胸がギュウ...ってなる。
どうして彼がそう思ったのか分からないけど、...そうだったらどんなに幸せなんだろう...って思ったら泣きそうになった。

『ううん、違うよ！私はただの教え子。動画、ありがとう(^^)』

...ただの教え子。

『そうなのかぁ。変なこと言っちゃってごめんね！じゃあ、本当にちゃんと消去します！お店にはまた行くと思うー☆』

自分で打った『ただの教え子』って言葉に胸を抉られたようで、溜息が零れた。

「...後で見よう...」

スマホをベッドサイドの充電器に挿して、部屋着に着替えてそのまま自分の部屋を出た。

私が相葉くんからの動画ファイルを開いたのは、その夜ベッドに潜り込んでからだった。

スマホに繋いだイヤホンから流れるのは、大野先生と二宮先生の声のはずなのに

やっぱり私の耳は、好きな人の声だけを探し出してしまう。

きっと何百人の声が重なってても、私は先生の声を見付けられる。

小さな画面の中で繰り広げられるライブ。

最後にサングラスを取って、凄く楽しそうに笑う先生。

大好きな笑顔を見てるのに、悲しくて、悲しくて悲しくて

何がこんなに悲しいのか分からないけど、スマホを裏向けて布団に顔を押し付けるようにして声を殺し泣いた。

耳には挿しっぱなしにしてるイヤホンから「はい、祭はここまで！諸君、来週から勉強に勤しむように！」って先生の声が聴こえてきた。

「...フフッ、先生らしい...」

一回見ただけで、こんなに泣けるのに。

私はもう一度、最初から繰り返して見始める。

5回、繰り返した頃にはもうどの歌もメロディラインを覚えてた。

10回、見終わった頃にはもう歌詞も覚えてた。

先生の紡いだ言葉達を、画面の中の先生に合わせて小さく歌ってみた。