イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ7)

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127.無邪気。ページ7

翌日、カフェカウンターに立ってると1人の男の子が店に入って来た。

本屋に居る加藤さんが「いらっしゃいませ」と言うと、「こんにちはー！」って愛想良く応えてる。

スラリと高い身長に、流行を取り入れた服装と髪型。
モデルさんのようだけど、彼がモデルじゃない事は知ってる。

「いらっしゃいませ」

カウンター前に立った彼に声を掛けると、やっぱり「こんにちは！」ってニコニコ。
目尻に寄った皺が優しい顔立ちを更に穏やかそうに見せる。

「桃ジュースくださーい」
「あ...申し訳ありません、桃ジュースは夏だけの限定商品で...」
「うっそ！うわぁ、ショックー...」
「すみません、本日のジュースは梨なんです」
「梨？俺、梨も好き！」

落ち込んでた顔が、またパッと明るくなって
つられて私も笑っちゃう。

「美味しいですよ！梨ジュースも」
「じゃあ、それください」
「かしこまりました」

代金を受け取り、ジュースを作って渡すと

その香りを匂っただけで「美味しい！」って言うから、思わず「まだ飲んでないでしょ！」って突っ込んでしまった。

「アハッ！お姉さん、ノリ良いね！」

楽しそうに笑ってる彼に

「相葉くん、だよね？」

そう訊くと、ビックリした顔をして固まってる。

「えっ...何で俺の事を...？」
「あ、実は」
「待って！...もしかして、俺お姉さんと昔チョメチョメした！？」
「えっ！？してないしてない！！」
「シてない！？良かったー...だよね？お姉さんとはシた記憶無いもんね」

爽やかに見えるけど、やっぱ派手な子だったし遊んでたのね...とか思いつつ

「高校が一緒なの。私、相葉くんの2個上」
「へぇ！そんなんだー！先輩だっ」

ウハッて無邪気に笑う。
何か...遊んでても許せてしまう空気感が恐ろしい...。

「相葉くん、前にもここに来てくれたよね？」
「うん！彼女とお祭行った日ね。あっ！あの日、大変だったんだよ！」
「夕立ち！」
「そうっ！ちょー濡れた！すっげー走ったら下駄脱げるし！」

大変だった話をしてるはずなのに、相葉くんは楽しそう。

その日、私も大雨の中走ったんだよ。

大嫌いな雷が鳴ってね、耳塞ぎながら必死で走ったの。

喉の奥が血の味する事って無い？
私はよくあるんだけどね、もう血吐きそう！って思った位だよ！

こんな話をしたら、きっと私も楽しそうな顔になるんだろう。

先生との想い出は、凄く辛いのに

辛いはずなのに、思い出すとやっぱり胸がキュッ...となる。