イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ39)

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159.お話。ページ39

私と加藤さんは、夕食を食べながら話そうという事になって駅前のファミレスに来た。

高床式のような下が駐車場になってるそのお店の窓から外を見ると、少しだけ高い所が見える。

お互い料理を注文してドリンクバーで加藤さんはコーラ、私は烏龍茶を取って来て

「ご飯にコーラを合わせるんですか？」
「これは食前酒的な？食前炭酸？」
「お腹膨らんじゃいますよ」
「食べ過ぎ防止にもなるよ」

なんて会話をして

ちょっと沈黙。

平日だし、お客さんは少な目。
加藤さんは窓から外を眺めながら、ストローを咥えてコーラを吸う。

「あのさ...」
「あ...はい」

烏龍茶を飲む為に咥えてたストローを慌てて口から離す。

「昨日、『先生は俺に謝った』って言ったでしょ？」
「...はい」

勝手に加藤さんの小説を私に読むように言ってしまった事。
そのせいで、加藤さんの想いを私は知ってしまった。

それを先生は謝ったんだと、昨日の加藤さんからの電話で聞いた。

「律儀な人だ、とも言ったでしょ？」
「はい」
「俺が謝られたの、それだけじゃなかったんだよね」
「...え？」
「昨日さ、先生店に来てキョロキョロしてたんだよ。Aちゃんを探してんだろうなってのは分かったんだけど...ちょっと意地悪して、気付いて無い振りしてた」

加藤さんがストローで、コップの中の氷をカラカラと混ぜる。

カラカラ...カラカラ...

「そしたら、先生がけーちゃんに『結城は休みですか？』って訊いてて。もちろん、けーちゃんは『急用があったらしくて』って答えるでしょ？」
「そう...ですね」

小山さんにはそう言って加藤さんと休みを代わって貰ったんだから。

「そしたら、そのまま先生は帰ろうとして。そん時に、目が合っちゃって...」
「......」
「『君に訊くのは失礼かもしれないけど、結城がどこに居るか知ってる？』...って。訊かれちゃって」
「......」
「訊かれちゃったら、嘘つけないじゃん？でも、すんなり教えるのも...やっぱ悔しくって」

ちょっと気まずそうに、アハ、って笑って

首の後ろに添えてた手で、襟足をガシガシと掻いた。

「だから質問したんだ」
「...質問...？」
「先生は、どーゆーつもりでAちゃんに会いに行くんですか？って」
「......」

先生ね...と、加藤さんが私を見る。

「ずっと待たせてたから迎えに行こうと思ってる、って」

その言葉を言ったのは確かに加藤さんの声だったのに

まるで、先生の声が聴こえたようだった。