イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ33)

今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:2,323,684 hit

153.説明と理解。ページ33

指に引っ掛けた車のキーをクルクルと回しながら、先生が庭を歩く。

「こっちおいでー」

玄関の前で立ち止まってたら、先生が振り向かずに声だけで私を呼ぶ。

ついて行くと、車の横に立った先生が助手席のドアを開けた。

「あの...」
「何？」
「私、乗って良いんですか？」
「ダメだと思うの？」

ん？って顔して首を傾げられて、ううん、って首を振る。

「分かりきってる事は、わざわざ訊かないの」

ポコッて軽く頭を叩かれて、クフ、って笑ってしまった。

憧れてた助手席に、また乗れる。
しかも...

しかも、私、先生の.....あれ？
先生の.....

...先生の何なんだろう？

そう言えば...好きって言われたけど、これからどーするかなんて聞いてない。

運転席に座った先生がエンジンをかける。

「ねぇ...先生」
「んー？」
「私と先生は...これからどうなるんですか？」
「はっ！？」

目を真ん丸にした先生が私の方を勢いよく見て、その拍子に彼の手が当たったらしくプワッ！って短くクラクションが鳴った。

2人でその音に驚いて顔を見合わす。

「...ビックリしたー...」
「結構大きな音でしたね！」
「そっちじゃねぇよ」
「え？」
「オレはお前が言ったコトに驚きました」

言ったコト？

「結城、これまでオトコと付き合ったコトは？」

ううん、と首を振る。
だって、周りが彼氏欲しいだなんだ言ってる時期に私はずーっと先生しか好きじゃなかったんだから。
青春を全部賭けてたんだから。

先生が手を伸ばして来て、ポンポンと私の頭を撫でた。

「全てをちゃんと言わなきゃダメなのね」
「...言う？」
「何となく空気で、みたいなのはお前には通じないってコトか」
「空気...」

私、空気が読めてないって事なのかな...

どうしよう、やっぱりこんな子供は好きじゃないとか思われてたら...

「ンフ、そんな不安そうな顔すんなや」
「...不安です...」
「新鮮だなぁって思ってるだけだから、なんも心配する必要無いよ」

もう1度ポン、と頭の上の手が跳ねる。

「これからオレとお前がどーなるか、知りたいんでしょ？」
「はい」
「これからオレとお前はね？」

運転席から、先生がグイッと私に体を寄せた。

頭の上にあった手が、後頭部に滑り降りる。

「恋人になるんだよ」

優しく弧を描いた目。
微笑む口元。

「恋人...」
「そう。オレは、お前の『彼氏』」
「…」
「理解した？」
「…した...」
「よし」

先生が運転席に体を戻し、静かに車が走り出す。