イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ31)

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151.読みたくない。ページ31

「...先生...」

畳みにペタンと座って、少しだけ上にある先生の顔を見上げる。

「...恋、煩い...？」

私の言葉に、先生は声を出さずにただ頷いた。

「...どーゆーコトですか...？」
「え？」
「恋煩いって...それはどーゆーコトですか？」

胸が破裂しそう。
それでも、ちゃんと聴かせて欲しい。

「私との未来を考えてたって...どーゆーコトですか？」

先生の腕をニット越しにギュっと掴む。

細いけど、やっぱり男の人の腕で、それだけでもまた胸が痛くなる。

「行間を読みなさい」
「...読みたくない...」
「どうして？得意でしょ？」
「...今は読みたくない...」

クッ、って笑った先生に「『降伏』には、もう一つ意味があります」って言うと「お」って片目だけをちょっと大きく開いた。

「負けを認めた相手に従う事」
「フフッ、うん。そうだな」
「だから、私に従って下さい」

私がそう言うと、先生は面白そうに口の端を上げた。

「先生が何言ってるか私全然分からないから...分かりやすく教え下さい」

腕を掴んでる私の手の上に、彼は自分の手を重ね「生意気だね」って言うと

「お前との未来を考えたのも、お前から離れようと思ったのも、それでも会いたいと思ったのも」
「......」
「それはオレが、ね？」

自分の目の端から涙が零れてるのが分かる。

だけど、先生の顔から一瞬でも目を離したくないから瞬きだってしたくない。

「結城を、好きだから」

言葉に、声に、鍵をかけて大切に隠しておきたいと思ったのは初めてだ。

先生のこんな言葉も声も、私以外の誰にも聴かせたくない。

「泣き過ぎ」

ボロボロ零れる涙を拭こうともせずにずっと先生を見てる私に呆れたように笑って、ニットの袖でグイグイと目尻を拭いてくれた。

袖を伸ばしてるから萌え袖になってて、キュン...となる。

「言わなくってもお前なら読み取れるでしょ」
「...だって...」
「ん？」
「...聴きたかったんだもん...」

アハ、って笑った先生の手がグシャって私の頭を雑に撫でる。

「可愛い、とかもう言っても良いか」

グシャグシャ、撫でられる頭。

「はい、泣きやみなさい」
「...うぅ...」
「オトナなんだろ？」
「...先生が悪い...」
「悪いの？」
「...悪い...」
「ンフフ、そうですか」

グシャグシャ、もうきっと髪ボサボサだ。

「まぁ、暫く泣いとけば？泣いてても可愛いし」

ちょっと意地悪な顔した先生の言葉に「絶対嘘だー」って笑いながら泣いた。