イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ16)

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136.これ以上。ページ16

「もう良い？」

先生が、自分の腕を掴んでる私の手を指差す。

離せ、って意味なのは分かってる。
分かってるけど、離せない。
離す事なんて、出来ない。

ハァ...と、先生が溜息をついた。

「オレはね、お前と会いたくなかったから店に行くのやめたの」
「......」
「何？他に何か知りたい事でもあんの？」
「...先生は...」

思わず先生の腕を掴む手にギュウっと力が入って、「いてぇよ」って笑われた。

それでも私はその腕をギュウ...っと掴み続ける。

「先生は...どうして私に会いたくなくなったんですか...？」
「......」
「私、先生と仲良くなれたのかなって思ってたのに...」
「仲良く...ね」

ククって先生が笑うから、何だか凄く悲しくなった。

「言ったでしょ？自分が教師だってコト、思い出したって」
「......」
「それがお前と会いたくなくなった理由」
「...全然分かりません...」
「分かんなくっても良いよ」

優しく微笑んだ先生が私の手に触れて

そのまま自分の腕から私のその手を、離した。

「先生は、...先生だけど、もう私は生徒じゃないし...」
「邪魔したくないんだよ」
「......え？」
「オレはね、お前の邪魔をしたくないって思ったの」
「邪魔なんて...そんなの、全然されてないし...」
「もっと周りを見ろって言ったでしょ？お前の世界が、狭くなってんじゃないかなって思った」

オレのせいでね、って呟く横顔を

見ているのが辛いのに、目を逸らすのも辛い。

「...確かに私の世界は狭いのかもしれないです」
「......」
「だけど、それは私が望んで作った世界です」

私は、自分の世界が先生だけになって良いって思ってるんだ。

先生しか欲しくなくって、先生さえ居てくれたら私は息ができる。

逆に言えば、このまま先生を失ったら私はここに居る意味さえ無いんだ。

何度も何度も相葉くんから貰った動画を観て
何度も何度も先生の歌声を聴いて

その度に涙が溢れた。

諦めようとしてた想いは、諦めるなんてどうしたって無理なんだと思い知った。

「だから...だから、先生。私に会いたくないなんて、言わないで下さい...」

泣きそうだった。

でも、泣いたらこの勇気が全部無駄になっちゃいそうな気がして必死で我慢する。

俯いて、痛い位に唇を噛んで、拳を爪が掌に食い込む程に強く握った。

「......お前は、残酷だね」

俯いた私の頭に乗る、先生の掌。

「これ以上、オレを困らせないでよ...」

先生の声が、胸に落ちる。