イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ2)

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122.ネタバレ。ページ2

「先生、最後に俺に言ってくれたんだ。『主人公が想いを寄せる子の描写が秀逸だった』って」
「それ...私にも言ってました」

また、加藤さんが首を振る。

「俺に言ったのは、それだけじゃない」
「え...？」

加藤さんが大きな目をフっと優しく細めた。

「こんな子が自分の側に居たらオレも絶対に好きになっちゃうだろうね、って...」

全身に鳥肌が立ったような感覚だった。

何も言えない私に、加藤さんは続ける。

「俺は先生じゃないからいい加減なコトは言えないけど、拒否した訳じゃ無い気がして...」
「......」
「だからAちゃんにこのまま諦めて欲しくなくて...」
「......」
「あー...待って！この話をする前に、先に言わなきゃいけないコトあった」

ンンッ、って咳払いをして彼は背筋を伸ばした。

「俺は、Aちゃんが好きです。どれくらい好きかと言うと、この恋が実るなら小説家になれなくても幸せだって本気で思えるくらい」

胸が、ギュ...っとなる。

ギュウゥ...って、苦しくなる。

「だけど実らないから。俺は小説家にならなきゃいけないんだ」
「......」
「だから、フって？俺の事。これから頑張れるように、ちゃんとフって」
「...加藤さん...」
「大丈夫。泣いたりしない」

ニィって笑った加藤さんを見て、私の方が泣いてしまったのは本当にズルいと思うしやな奴だなぁ...と思う。

「ごめ...なさい...」
「ううん」
「ごめん...なさ...っ...」
「謝らないで？ほら、泣かないで」

加藤さんの大きな手が、私の頬をソっと撫でる。

「これ位なら許してくれる？」
「......」
「うそうそ、困らせてゴメン！」

そう言った彼の手が、頬から離れた。

「ありがと、Aちゃん」
「...え...？」
「フってくれて、ありがと」

ブンブンと首を振ったら、涙が飛んだ。

「ねぇAちゃん。小説、最後まで読んだ？」
「...あ...途中で読めなくなっちゃって...」
「ネタバレしても良い？」
「...はい」
「あれね、主人公にとっては...どっちかと言えばバッドエンド。彼の恋は実らない」

俺と一緒ね、って加藤さんが小さく笑う。

「でも彼女にとってはハッピーエンド。大団円」
「...そう、なんですか...？」
「うん。あの物語の中で彼女は、大好きな彼と一緒になれる」

私はそんな未来を、何度も夢に見てる。

「その結末が、俺の本心。俺は、AちゃんはAちゃんの恋を実らせて欲しいって本気で思ってる」

優しい声に、また涙が落ちた。