― drip ― (ページ5)

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ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ「もしもし？」

　
ついさっき家に送った愛しい人からの呼び出しに平然を装って応える

　『別れたよ』

　「えっ！？」

驚き過ぎて言葉が詰まる、本日二度目。もう0時過ぎてるけど

きっとタクシーに乗ってるであろう騒音が聞き取れる。聞きたいことは山ほどあるはずなのに、何から聞けばいいかわからない。しどろもどろになっていたら

　『セフナ、私に恋してるんでしょ』

僕とヌナの間にあった分厚くて硬い壁が嘘みたいにバラバラ崩れて行く。たった一言でいとも簡単に一瞬で。

　『ずっと待たせてごめんね。』

ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ「ヌナ！！」

走ってヌナの元へ駆け寄る

　『全力疾走だ。』
　「当たり前」

　

ヌナが電話をかけながら乗ってたタクシーの行き先は僕の家の最寄り駅で、それを覚えていてくれた事にさえ愛しさが込み上げてくる。

　『住所覚えてたらよかった』
　「何回言っても覚える気なかったくせに」
　『ごめんってば～』

ゴロゴロとヌナのキャリーケースを引いて家に向かう。いつもヌナの家に送ってたはずなのに、すごく変な感覚に陥る。てゆうかそんな事考えてる場合じゃない。

口を閉じてられなくて、歩く足を止めてヌナと向き合う。

　「別れたって本当？」
　『やっと聞いてくれた。本当だよ』
　「あのあとすぐに？」
　『やだセフナ、立ち話するの？』

家で座って話そうよ、と小さく笑いながら歩き出すヌナ。

でも見逃せないんだよ、その涙の跡。先を行くヌナに追い付かずにその場に立ってたら、戻ってきてくれるから可愛くなって抱きしめた。

あ、間違えたって頭で思ってても身体はヌナをぎゅ
と抱きしめて離したくないって言う。すっぽり胸の中に収まるヌナはすごく小さくて、愛しくてたまらなかった。

　『..セフナ？』
　「なんかされたの？なんで、泣いたの」
　『ちょっと苦しくなっただけ』

今までの自分が別人みたいにヌナを強く抱きしめてたら、また頭の中が色んな思いでぐちゃぐちゃになってくる。

さっきと違うのはヌナに好き、と伝えていいんだって気持ちとやっぱこれって利用されてるよなって気持ち。

でもヌナが僕を抱きしめ返してくれた瞬間そんなぐちゃぐちゃ全部吹っ飛んだ。不謹慎すぎるけどチャニョリヒョンありがとう。ヌナを裏切ってくれて、本当にありがとう。