― drip ― (ページ3)

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痛いくらいに感じる、セフンからの熱のこもった視線。気づかないわけがないし、ずっと長いことセフンからの想いを無視してる。きっと想いを伝えるタイミングは何度もあったけどセフンは言わない。

じゃなくて私が言わせない、の方が正しいか。

セフンの想いを悪く利用して、私が心地いい関係に浸ってられるように。最低なことしてる思うけどこの気持ちに応えればセフンが離れていく気がして怖い。だから知らないフリをしていた。生意気な後輩止まりにしておきたいから

でもセフンがいたからチャニョルの浮気もこんなに冷静に受け止められたんだろう。私のことを好きでいてくれるセフンに私は甘えすぎてる。だから浮気仕返す、なんてまた最低なことを言える。

ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ「じゃあね、ヌナ。」

　『ありがとう。セフナおやすみ』
　

結局なにも結論は出ないまま今日も、セフンは私とタクシーに乗って家まで送り届けてくれる。

鍵をさして回せば何故か閉まる玄関のドア。
中から鍵が開けられて出てくるのは絶賛浮気中の彼氏

　「遅いじゃん。どこ行ってたの？」
　『後輩と少し飲んでた』

うん、間違いじゃない。

　『チャニョル、仕事おつかれさま』

急に断らない仕事、入ったんだもんね。

　「取引先がさあ、話すの長くて連絡できなかった。ごめんね？」

きっと丸くて大きい目を使って困り顔をしてるんだろうけど、スルー。見てやんない。

　「え、お名前どうしたの？」
　『んー？なにが？』

いつもの私なら違う反応してたもんね。チャニョルも私と同じで、自分の所有物が無くなるのをすごく嫌うタイプだからどうにか私の機嫌を取ろうとすり寄ってくる。

　「俺なんかした？ごめんね？」
　

なんかしまくりだっつーの。でも浮気見たことは言わない、急に消えてあげる。もう私は用無しなんだよね？

チャニョルの意味のわからない謝罪に背を向けて、必要最低限のものを持ってる中で一番大きなキャリーケースに詰めていく。

　「お名前？」

気分悪いだろうな、自分の女が自分の言うこと聞かないなんて。思い返せばずっとそうだった。お名前は俺のこと好きなんだから、ってまるで今の私とセフンみたいに。

だんだん口調が強くなってきてチャニョルが苛立ってきてるのが分かる。そりゃ理由も言わずに荷造りなんて意味わかんないもんね。